欧州委、エネルギー価格引き下げに向けたガイダンス発表

(EU)

ブリュッセル発

2025年08月07日

欧州委員会は7月2日、再生可能エネルギー(再エネ)、電力系統、託送料金に関する勧告と3つのガイダンスを発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。これらは、クリーン産業ディール(2025年3月4日記事参照)の中核として発表された「手頃なエネルギーに向けた行動計画」、再エネ指令改正法(2023年9月20日記事参照)、電力市場改革法(2023年10月20日記事参照)の実行を促進するものだ。

各ガイダンスの主な内容は次のとおり。

〇再エネ導入の革新的な技術と形態に関するガイダンス

再エネの革新的な形態(営農型太陽光発電、水上太陽光発電、建築物・インフラ組み込み型など)や、革新的な再エネ技術(潮力発電などの海洋エネルギー、浮体式洋上水力)に関しては、建築基準、環境保護規制、土地利用規制などの関連法令で具体的に想定されていないため、許認可手続きに時間を要することが多い。このため、これらの技術と形態について定義し、必要な手続きを明確化することで、許認可手続きの迅速化を図る。

〇再エネ電力システムへの組み込みに必要なグリッドと電力貯蔵インフラに関する区域設定のガイダンス

EU加盟国は電力系統の整備計画や、必要となる柔軟性、環境への影響などを考慮し、隣国とも連携した上で、特定インフラ区域を設定する。同特定区域内で行われる送電網や蓄電設備の整備プロジェクトは、一部の環境影響評価に関する手続きを免除することが可能となる。

〇エネルギーシステムコスト削減に向けた将来の託送料金に関するガイダンス

電力系統使用の効率化に加え、柔軟性や立地インセンティブを強化することを目指す。そのための託送料金について、次の内容を推奨する。

  • 託送料金の需給状況に応じた価格変動制/時間帯別料金、送電料金と配電料金のアロケーションの見直し、容量〔(キロワット(kW)〕ベースの課金、発電側課金などによる立地インセンティブ、発電側と使用側での二重課金を防ぐための電力貯蔵装置向け料金設定など

また、クリーン産業ディール国家補助枠組み(CISAF、2025年6月30日記事参照)でも、域外移転リスクの高いエネルギー集約型産業(注1)に対する一時的な電力料金の軽減が含まれた。当該地域の年間平均卸価格の最大50%(ただし、年間電力消費量の50%までが対象)を最大3年間引き下げる(注2)。これは、支援額の50%以上を再エネ発電の開発、エネルギー貯蔵ソリューションなどへの投資に活用することが条件となっている。

(注1)貿易集約度〔(EU域外への輸出額+輸入額)/(EU域内の売上高+輸入額)〕と電力集約度(付加価値額に占める電気料金の割合)を掛け合わせた数字が2%以上、かつ、貿易集約度と電力集約度がそれぞれ5%以上の産業。

(注2)ただし、補助金適用後の電力価格が50ユーロ/メガワット時(MWh)を下回ることはない。また、事業者の総投資額のうち電力需要の柔軟性向上のための投資が8割以上を占める場合、支援額の10%を上限に追加的に支援することが可能。その場合、追加支援額の75%以上を再エネ発電の開発やエネルギー貯蔵ソリューションへの投資に活用しなければならない。

(牛来博哉)

(EU)

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