日本製鉄がUSスチールの買収を完了し完全子会社化、投資額は142億ドル
(米国、日本)
ニューヨーク発
2025年06月19日
日本製鉄と米国鉄鋼大手のUSスチールは6月18日、両社のパートナーシップが成立したと発表した(日本製鉄発表、USスチール発表
)。
日本製鉄の発表によると、同日に米国子会社の北米日本製鉄(NIPPON STEEL NORTH AMERICA)がUSスチールの普通株式を100%取得し、完全子会社化した。投資額は142億ドルで、日本円で2兆円超に達する。日本製鉄は米国市場について、先進国で唯一、人口が長期的に増加し高水準の国内需要が期待されることや、高級製品需要の伸びが期待されること、関税により輸入製品から保護された市場であることなどを、投資先としての魅力に挙げた。
日本製鉄とUSスチールは、2023年12月に買収計画で合意した。しかし、対米外国投資委員会(CFIUS)が審査を行い、2025年1月にジョー・バイデン前大統領が取引を禁止する行政命令を発表した。しかし、1月20日の政権交代後の4月にドナルド・トランプ大統領がCFIUSに再審査を指示し、6月13日に買収を認める大統領令を発表した。併せて、米国政府は両社と国内生産や雇用の維持などに関する「国家安全保障協定(NSA)」を締結したほか、USスチールの独立取締役1人の選任権や一定事項の同意権などを有する「黄金株」を保有することになった(2025年6月17日記事参照)。
現地メディアはNSAや黄金株の仕組みに注目している。「ニューヨーク・タイムズ」紙(電子版6月18日)は、「ホワイトハウスは、国家安全保障上の懸念を緩和するための合意の一環として、USスチールに対する異例の支配権を獲得することになる」と伝えた。ブルームバーグ(電子版6月18日)は、「特に注目すべきは、鉄鋼メーカーが米国大統領に、意思決定プロセスにおける複数のシナリオにおいて永久的で直接的な発言権を約束した点だ」と伝えた。また、「ワシントン・ポスト(WP)」紙(電子版6月18日)は、「1年半以上にわたり難航した交渉の末、米国政府が重要な決定に関して相当な決定権を保有することで合意した」「この買収に当初は反対していたトランプ氏にとっても画期的な合意だった」と伝えた。一方で、WP紙は、有識者のコメントを引用して、今後の外国直接投資にも同様の仕組みが波及するかは現時点で不明瞭だとまとめた。
(葛西泰介)
(米国、日本)
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