トランプ米政権、対ロ追加制裁を当面発動せず、停戦の調整優先

(米国、ロシア、ウクライナ)

ニューヨーク発

2025年08月21日

米国のマルコ・ルビオ国務長官は8月17日、現地メディアのインタビューで、ロシアとウクライナの停戦の調整を優先し、ロシアに対する追加制裁を当面発動しない考えを示した。ただし、調整の結果次第では、制裁強化に踏み切る姿勢も示している。

ルビオ氏は、米国のドナルド・トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領の米ロ首脳会談(2025年8月19日8月20日記事参照)に関して、8月17日に複数の現地メディアのインタビューに答えた。ロシアに対する制裁に関して、フォックスニュースのインタビュー外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、「世界中でロシアとウクライナを仲介できる指導者はトランプ氏だけだ。(米国がロシアに)追加制裁を講じた瞬間、(仲介の)役割を失うことになる」と述べ、停戦の実現に向けた調整を優先する方針を強調した。また、ABCニュースのインタビュー外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、「(戦争終結の)努力が失敗すれば、ロシアに対する追加の措置が必要になる」「トランプ氏は、戦争が続く場合に追加の措置を講じる姿勢を明確にしている」と述べ、停戦に至らなかった場合には、追加制裁を発動する意向を示した。

トランプ氏は7月、ロシアがウクライナでの停戦に応じない場合、ロシアの歳入の制限を目的に、8月上旬からロシア産品を購入する国に対して100%の「2次関税」を発動する意向を示していた(2025年7月31日記事参照)。ただし、これまで、インドに対する2次関税(注)以外の措置は発動していない。

首都ワシントンのシンクタンクは、2次関税を含めて米国がロシアに対して講じ得る措置を分析している。保守系シンクタンクのハドソン研究所は8月14日の報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、インドに対して課している2次関税を中国にも適用することや、ロシア産の石油の輸送を担う「影の船団」に対する制裁強化、米国で差し押さえたロシア政府の資産のウクライナへの提供など、9つの措置を列挙した。一方、超党派シンクタンクのブルッキングス研究所は8月13日の論考外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、ウクライナによる利用を目的とした欧州への武器販売の強化、欧州で差し押さえたロシア銀行の資産のウクライナ提供などの措置を挙げた。

(注)トランプ氏は8月6日、ロシア産の石油の購入を理由に、インドに対して8月27日から25%の追加関税を課す大統領令を発令した(2025年8月7日記事参照)。米国のインドに対する25%の相互関税に上乗せされる。

(葛西泰介)

(米国、ロシア、ウクライナ)

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