トランプ米大統領、ゼレンスキー大統領ら欧州首脳と会談、ウクライナの安全の保証を協議
(米国、ウクライナ、ロシア、英国、フランス、ドイツ、イタリア、フィンランド、EU)
ニューヨーク発
2025年08月20日
米国のドナルド・トランプ大統領は8月18日、首都ワシントンで、ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領ら欧州首脳(注)と会談した。15日に実施したロシアのウラジーミル・プーチン大統領との米ロ首脳会談を踏まえて(2025年8月19日記事参照)、今後の対応を協議したとみられる。
米ロ首脳会談では、ロシアとウクライナの戦争終結の条件を協議したもようだ。米国のスティーブ・ウィトコフ中東特使は17日の米国メディアのインタビューで「ロシアに幾分の柔軟性が見られ始めた」などと述べ、将来的な和平後のウクライナの安全の保証に関する協議が進展したことを示唆した。また、米国のマルコ・ルビオ国務長官は同日の米国メディアのインタビュー
で「プーチン氏を交渉のテーブルにつかせられるのはトランプ氏だけだ」と述べたほか、別のインタビュー
で「トランプ氏、ゼレンスキー氏、プーチン氏の3人の指導者の会談を実施し、和平合意を最終決定すべきだ」と述べ、3カ国会談の実施に意欲を示した。
今回の欧州首脳との会談では、米ロ会談を通じて進展が示唆されたウクライナの安全の保証に関する米国と欧州の協力や、3カ国会談の実施の方向性などを協議したもようだ。ホワイトハウスが18日に公開した欧州首脳の発言要旨によると、ゼレンスキー氏は「トランプ氏と非常に良い会談ができた」と述べた。また、今後に向けて、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は「困難だが、交渉への道が開けた」、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は「3カ国会談のアイデアは非常に重要で、問題を解決する唯一の方法だ」と述べた。
ルビオ国務長官は18日の米国メディアのインタビューで「将来的な終戦後にウクライナが再び侵略されないと確信できる必要がある」と強調した。欧州首脳との協議内容に関して、ウクライナに対するNATO以外の安全の保証の構築を検討していると述べ、「ロシアもウクライナが他国と安全保障協定を結ぶ権利を認めた」「欧州以外の国々とも協力して、安全の保証を構築していく」と説明した。
米国シンクタンクの外交問題評議会(CFR)は18日の論考で「トランプ氏がウクライナに対する米国による安全の保証を提供する意向を示したことが注目される」としつつ、短中期的には戦争状態は継続する可能性が高いと指摘した。また、ブルッキングス研究所も同日の論考
で、和平の成立は戦争の継続よりも望ましいとしつつ、「和平に向けた障害は非常に大きく、近い将来に重大な進展を期待すべきではない」と指摘している。
(注)ゼレンスキー氏のほか、英国のキア・スターマー首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相、イタリアのジョルジャ・メローニ首相、フィンランドのアレクサンドル・ストゥブ大統領、NATOのマルク・ルッテ事務総長、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長。
(葛西泰介)
(米国、ウクライナ、ロシア、英国、フランス、ドイツ、イタリア、フィンランド、EU)
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