インテル、ドイツ工場計画を撤回、欧州の半導体供給網強化に逆風

(ドイツ、ポーランド)

ベルリン発

2025年07月31日

米国の半導体大手インテルは7月24日、プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます2025年第2四半期財務報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、ドイツとポーランドで計画中だった半導体工場プロジェクトからの撤退を発表した(2023年8月3日記事参照)。ドイツのプロジェクトはザクセン・アンハルト州マクデブルクの半導体工場建設計画を指すもので(2023年6月29日記事参照)、2024年には2年間のプロジェクト延期が表明されていた(2024年3月10日記事参照)。

インテルの経営状況は思わしくない。2025年第2四半期の売上高は前年同期と同水準の129億ドルだったが、1株当たりの利益(Non-GAAP EPS)は前年同期の0.02ドルからマイナス0.10ドルへと赤字に転落。純損失は29億ドルに達し、収益性の面で厳しい結果が出た。3月に最高経営責任者(CEO)に就任したリップブー・タン氏は、需要を見極めずに投資を先行させた結果、工場が分散しすぎて稼働率が低下したと振り返る。今後は資本配分の見直しおよびコスト削減を優先するとしている。

マクデブルクのプロジェクトは、欧州における半導体供給網の強化と戦略的自立を象徴する取り組みとして注目されていたが、戦略的見直しの中で中止された。また同時に、コスタリカの組立・実験拠点がベトナムとマレーシアの拠点へ統合されることも発表され、インテルがグローバルにリソースを再配置し、革新と差別化が可能な分野に集中する方針が鮮明になっている。インテルによるマクデブルク計画からの撤退は、EUが掲げる半導体自給率向上に係る目標の実現可能性だけでなく、今後の域内産業政策にも影響を与えるとみられる(2024年10月29日付地域・分析レポート参照)。

インテルの撤退について、ザクセン・アンハルト州首相のライナー・ハーゼロフ氏は、欧州半導体法とザクセン・アンハルト州にとって残念なニュースとしながらも、決定が明確になったことを前向きにとらえ、今後もマクデブルクでのハイテク企業誘致に力を入れていくと語った(2023年8月2日記事参照)。他方、マクデブルク市のシモーネ・ボリス市長は、多大なリソースを投入したプロジェクトが白紙になったことに失望を示しつつも、工場予定地を国際市場に再販したいとしている。

現地経済紙「ハンデルスブラット」によると、マクデブルクにはスタートアップ、FMCによる半導体関連の工場建設プロジェクトも進行中だという。ただし、意向表明書をこれから交わす段階のため、実現にはなお複数のステップを要する見込みだ(「ハンデルスブラット」紙7月18日)。

(打越花子)

(ドイツ、ポーランド)

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