欧州委、26加盟国に対し再エネ指令の速やかな国内法化を勧告

(EU)

ブリュッセル発

2025年07月31日

欧州委員会は7月24日、再生可能エネルギー(再エネ)指令改正法(2023年9月20日記事参照)の主要部分につき、国内法化の期限(5月21日)を過ぎたにもかかわらず、デンマークを除く26加盟国は欧州委に対し国内法化完了の通知をしていないとして、違反手続きを開始すると発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。加盟国は2カ月以内に国内法化を完了した上で、その旨を欧州委に通知することが求められる。

再エネ指令改正法(2023年4月3日記事参照)は、EU全体のエネルギーミックスに占める再エネ比率を2030年までに最終エネルギー消費ベースで42.5%(努力目標の2.5%分を加えると45%)に引き上げることを義務付けている。産業部門や運輸部門については、グリーン水素を含む非バイオ由来の再生可能燃料(RFNBO)の導入目標を設定している。

再エネ指令改正法をめぐっては、加盟国による適用に向けた法整備や政策立案の段階で既に遅れが目立っている。まず、上述の主要部分に先んじて、2024年7月1日に国内法化の期限を迎えた再エネ指令改正法の許認可手続きの迅速化に関する規定については、今回同様にデンマークを除く26加盟国が期限までに国内法化を完了させなかった(2024年10月2日記事参照)。また、加盟国が各目標の達成に向けた取り組みを明記する国家エネルギー・気候計画(NECP)についても、提出期限から1年近くたった2025年5月末時点で、ベルギー、エストニア、ポーランドの3カ国が未提出。提出した加盟国についても、11カ国が再エネ比率の目標値を下回っているほか(2025年6月13日記事参照)、産業部門のRFNBO導入目標についても不十分な内容となっている(2025年6月6日記事参照)。

EU全体の再エネ比率は、再エネ指令改正法の適用開始前の2023年時点で24.6%であり、2030年目標の達成には再エネ比率を倍増させるだけでなく、エネルギーシステムの抜本的な改革が必要と指摘されている(2025年7月10日記事参照)。EUの優先課題が再エネ推進などの気候変動対策から域内産業の競争力強化に移り、技術中立の原則の下に再エネではないが低炭素である原子力の役割が見直されるなど(2025年3月4日記事参照)、再エネを取り巻く環境が変化しつつある中で、再エネ指令改正法が再エネ整備やグリーン水素の市場形成に向けた投資の呼び水となるのか、今後の法整備やNECPの実施状況が注目される。

(吉沼啓介)

(EU)

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