EU、2030年の再エネ比率目標42.5%で政治合意、現状の2倍を目指す

(EU)

ブリュッセル発

2023年04月03日

EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は3月30日、エネルギーミックスに占める再生可能エネルギー(再エネ)比率の目標を規定する再エネ指令の改正案に関して、暫定的な政治合意に達したと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。合意によると、EU全体の最終エネルギー消費ベースのエネルギーミックスに占める再エネ比率について、法的拘束力のある2030年目標を42.5%とする。さらに、努力目標として2.5%分を追加することで、2030年の再エネ比率45%の達成を目指す。2021年のEU全体の再エネ比率は21.8%(2023年1月27日記事参照)だったことから、2030年までに再エネ比率を2倍近く引き上げる必要がある。改正案は今後、両機関による正式な採択を経て発効する見込み。なお、合意テキストは現時点では公表されていない。

再エネ比率目標を巡っては、EUが2030年の温室効果ガス(GHG)排出目標を1990年比で55%削減としたことから、欧州委は当初、法的拘束力を持つ2030年目標を現行の32%から40%に引き上げることを提案(2021年7月20日記事参照)。その後、ロシア産化石燃料依存脱却計画「リパワーEU」(2022年9月1日付地域・分析レポート)で45%へのさらなる引き上げを提案していた。これに対して、EU理事会は据え置きの40%(2022年7月4日記事参照)を、欧州議会は45%(2022年9月26日記事参照)をそれぞれ支持。両機関の交渉の結果、法的拘束力を持つ目標に関しては、中間の42.5%で合意した。

産業部門にグリーン水素の比率目標を課す、原子力由来水素の活用も実質可能に

原子力を推進するフランスなどの加盟国の主張により、EU理事会と欧州議会の交渉で焦点の1つとなっていた原子力の扱いに関しては、セクター別の再エネ目標で一定の役割が認められたとみられる。グリーン水素(2023年2月15日記事参照)の需要喚起策として、欧州委は、2030年までに産業部門で利用する水素消費量の50%について、グリーン水素を主体とする非バイオ由来の再生可能燃料(RFNBO)にするという新たな目標の導入を提案(リパワーEUで75%に引き上げ)。合意ではこのRFNBO比率目標について、2030年までに42%、2035年までに60%とすることで決着した。なお、加盟国がEU全体の再エネ比率目標への国別貢献を達成し、かつ水素消費量の化石燃料由来水素の比率を2030年に23%以下、2035年に20%以下にした場合、RFNBO比率目標を20%下げることが認められる。原子力由来の水素はRFNBOではないことから、その消費量を増やしたとしても、RFNBO比率目標の達成には直接貢献しない。一方で、原子力由来の水素は化石燃料由来水素でもないことから、化石燃料由来水素の比率の引き下げには貢献することでき、結果としてRFNBO比率目標自体を下げることにつながる。このことから、RFNBO比率目標の達成で原子力由来の水素の活用が実質的に可能になるとみられる。

運輸部門の2030年目標に関しては、EU理事会の主張どおり、加盟国は再エネ使用によるGHG排出原単位(GHG intensity)で14.5%削減、あるいは再エネ比率を29%以上(現行指令では14%以上)の達成のいずれかを選ぶことができる。また、運輸部門に供給されるエネルギーに占めるRFNBOの比率目標を先進バイオ燃料との合算で5.5%とする。ただし、最低でも1%以上はRFNBOでなければならい。

(吉沼啓介)

(EU)

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