再エネ指令改正法の国内法化期限を迎え、実行段階に向けたパートナーシップ呼びかけ
(EU、オランダ)
ブリュッセル発
2025年06月06日
オランダ・ロッテルダムで5月20~22日に開催された「World Hydrogen 2025」(2025年6月5日記事参照)のセッションの1つで、再生可能エネルギー指令改正法(2023年9月20日記事参照)の国内法化の期日(5月21日)を迎えた同指令に対して、加盟国の法制化状況などに関する議論が行われた。
セッションに参加したオランダ、ドイツの政府関係者は、両国の国内法上のRFNBO比率(注)が再エネ指令改正法の目標値より低いのは、法案作成時点に期待された水素市場が形成されておらず、グリーン水素製造にかかるコストの高さを反映していると指摘した。欧州委員会のエネルギー総局の担当は、目標値を実行に移す段階で、需要と供給の調整、価格シグナル、手続きの簡素化、パートナーシップの強化などを通じ、加盟国別に協議していくとした。
オランダ政府関係者は、輸送セクターのRFNBO比率の達成追求は可能だが、産業界では需要側、供給側のいずれに義務を課すか、達成できなかった際の罰則はバリューチェーンのどこに科されるかなどが不明で、欧州域内でグリーン水素の製造を拡大するには、目標値の緩和の必要性にも言及した。
ドイツ政府関係者は、法案作成時点ではグリーン水素の需要を喚起すべく、高い目標値を後押ししたが、現状の高い製造コスト(法案作成時のキログラム当たり3~5ユーロ想定に対し、現状は8~10ユーロ)は、グリーン水素製造への新規参入自体を遠ざける可能性があると指摘した。長期での値差支援には限界があり、製造コストを押し上げている要因を特定することが重要とした。
ドイツの電解プラント・エンジニアリング企業のティッセンクルップ・ニューセラは別のセッションで、グリーン水素は化石燃料からの脱却や欧州のエネルギー安全保障に寄与し、利用を進めていくが、コストの観点から、現在建設中の直接還元鉄施設は予定よりも長い期間、天然ガスでの運用を検討しなければならない可能性に言及した。
欧州委は今後、企業に対し水素プラットフォーム(2023年3月22日記事参照)への参画を呼び掛ける予定で、引き続き欧州域内外のパートナーシップ強化を通じ、クリーンエネルギーで世界をリードしていく方針だ。
(注)グリーン水素を主体とする非バイオ由来の再生可能燃料
(薮中愛子、宮崎真里佳)
(EU、オランダ)
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