米中通商協議、重要鉱物や先端技術の輸出管理緩和の枠組みで合意、関税は据え置き
(米国、中国)
ニューヨーク発
2025年06月13日
米国のトランプ政権は6月9~10日、英国のロンドンで中国との通商協議を実施した(注1)。ドナルド・トランプ大統領は11日にSNS投稿を通じて、米中両首脳の最終承認を条件に、「中国との合意が成立した」と明らかにした(以下、「ロンドン合意」)。ただし、協議成果に関する共同声明などは発表されておらず、合意の詳細は明らかでない。
米国は2025年2月以降、中国に最大145%の追加関税を課した。中国も米国に最大125%の報復関税を課した。米中両国は2025年5月にスイスのジュネーブで実施した通商協議で、両国が相互に賦課した追加関税を停止・廃止し、両国が協議を継続することなどで合意していた(以下、「ジュネーブ合意」、2025年5月13日記事参照)。ジュネーブ合意後、両国の追加関税は引き下げられたが、重要鉱物や先端技術の輸出管理の措置を争点に、両国の摩擦が続いていた(2025年6月9日記事参照)。
今回のロンドン合意の詳細は明らかでないものの、トランプ大統領は11日のSNS投稿を通じて、中国は米国に磁石や希土類(レアアース)を供給し、米国は中国人学生の米国留学を認めるなどと明らかにした。中国の米国に対する重要鉱物の輸出管理の緩和(2025年5月19日記事参照)や、米国の中国人留学生に対する在留資格の管理方針の緩和(2025年6月2日記事参照)を指すものとみられる。また、トランプ大統領は同投稿で、米国は中国に対して55%の関税を課し、中国は米国に10%の関税を課すと述べた。追加関税に関しては、ジュネーブ合意の水準で据え置きとみられる(注2)。
また、ハワード・ラトニック商務長官は協議後に記者団に対して、「ジュネーブ合意と米中首脳電話会談の合意事項を実施するための枠組みについて合意に達した」と述べたほか、両首脳の最終承認後に「同枠組みを実施する」と明らかにした(CNBC 6月10日)。さらに、ラトニック商務長官は、同枠組みに、中国の米国に対する重要鉱物の輸出管理の緩和や、中国側の履行状況を踏まえた上で、米国の中国に対する航空機部品、半導体、ソフトウエアの輸出管理の緩和(2025年5月30日記事参照)が含まれると説明した(米国政治専門紙「ポリティコ」6月11日)。
なお、米中両国の一部の追加関税の適用停止期限は、ジュネーブ合意90日後の8月12日に設定されている。今後、両首脳が合意内容を最終承認し、両国が「枠組み」に基づいて具体的な措置を講じていくかが注目される。
(注1)米国側は、スコット・ベッセント財務長官、ジェミソン・グリア通商代表部(USTR)代表、ハワード・ラトニック商務長官が参加した。
(注2)ジュネーブ合意後も、中国は米国に対する10%の追加関税の適用を維持している。また、米国は中国に対する(1)違法薬物の流入防止を目的とした20%の追加関税、(2)10%のベースライン関税の適用を維持している。さらに、(3)米国は2018年以降、ほぼ全ての中国原産品に対し、1974年通商法301条に基づく追加関税(7.5~100%)を課しており、多くの品目の関税率が25%に設定されている(2025年6月3日記事参照)。米国側の55%は、(1)~(3)の合計(55%)を指すものと推測される。
(葛西泰介)
(米国、中国)
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