米国務省、中国人留学生に対するビザを「積極的に取り消す」との声明発表
(米国、中国)
ニューヨーク発
2025年06月02日
米国国務省は5月28日、中国人留学生に対するビザを「積極的に取り消す」とするマルコ・ルビオ国務長官の声明を発表した。
ルビオ氏は「新たなビザ政策は中国ではなく、米国を第一に考える」と題した声明で、国土安全保障省(DHS)と協力し、中国共産党と関係を持つ中国人留学生や、重要分野を研究する中国人留学生に対するビザを「積極的に取り消す」との方針を示した。また、中国・香港に対して、全てのビザ申請の審査を強化するため、ビザ発給要件を改正すると明らかにした。
米国NGOの国際教育研究所(IIE)によると、2023/2024学年度に米国の高等教育機関が受け入れた外国人留学生は約113万人で、インド(約33万人)と中国(約28万人)の2カ国の留学生が全体の54%を占める。日本の留学生は約1万4,000人で、全体の1.2%となっている。仮に今回示したビザ取り消しが「積極的」に進められれば、約28万人の中国人留学生に影響が及ぶ可能性がある。
米中両国は5月12日に、2025年4月以降に相互に課した関税を引き下げ、協議を継続する枠組みを設置することで合意した(2025年5月13日記事参照)。一方で、トランプ政権は合意後、今回のビザ取り消し方針の発表のほか、中国に対する航空機部品や半導体技術の輸出許可を停止したとも報道されており(2025年5月30日記事参照)、中国に対する強硬姿勢を相次いで示している。
留学生や教育機関に対する圧力強化
このほか、トランプ政権は国家安全保障上の懸念や反ユダヤ主義への対抗などを理由に、外国人学生や、留学生を受け入れる高等教育機関に対する圧力を強めている。米主要メディアによると、国務省は5月27日に各国・地域の米国大使館に対して、学生・交流訪問者ビザ(F、M、Jビザ)の面接予約を一時停止するよう指示した(政治専門紙「ポリティコ」5月27日)。
また、DHSは5月22日にハーバード大学の「学生・交流訪問者プログラム(SEVP)」資格を取り消すと発表した(注)。同措置により、同大学は留学生を受け入れることができなくなり、同大学に在学中の留学生は転校しない限り、滞在資格を失う恐れがあった。だが、連邦地方裁判所は同大学の提訴を受け、22日に措置を暫定的に差し止めた上で、29日に正式に差し止めた(ポリティコ、5月29日)。
(注)連邦地裁の裁定に先立って、DHSは5月28日に同大学に対して、反論の根拠を提示する30日間の猶予措置を発表した。
(葛西泰介)
(米国、中国)
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