米232条鉄鋼・アルミ関税、追加関税率を50%に引き上げ、6月4日から適用
(米国)
ニューヨーク発
2025年06月04日
米国のドナルド・トランプ大統領は6月3日、1962年通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミニウム製品に対する追加関税率を25%から50%に引き上げる大統領布告を発表した。それに併せて、米国税関・国境警備局(CBP)は、鉄鋼製品
、アルミ製品
、累積優先順位
の輸入者向けのガイダンスをそれぞれ発表した。50%の追加関税は、米国東部時間2025年6月4日午前0時1分以降に通関した貨物に適用する(注1)。トランプ大統領は5月30日に米国鉄鋼大手USスチールの工場で行った演説の中で、追加関税率を引き上げる意向を表明していた(2025年6月3日記事参照)。
追加関税率の引き上げと併せて、特定の追加関税の累積徴収を停止する大統領令(2025年4月30日記事参照)を一部改定した。具体的には、6月4日以降、232条に基づく鉄鋼・アルミ製品に対する50%の追加関税の対象物品については、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づくカナダ・メキシコ原産品に対する25%の追加関税を累積徴収しないとした(注2)。
また、英国製品に対しては、「米英経済繁栄協定(いわゆる米英合意、2025年5月9日記事参照)」に基づき、追加関税率を25%に維持することも規定した。ただし、英国製品に関しても、2025年7月9日以降は、同協定に基づいて関税率の調整や関税割当の設定ができるとしている。
トランプ大統領は大統領布告の中で、「追加関税の引き上げは、米国市場に低価格で過剰な鉄鋼・アルミ製品を継続的に輸出することで、米国の鉄鋼・アルミ産業の競争力を損なう外国の行為に対抗するための、より効果的な措置になる」との目的を説明した。
232条は、特定製品の輸入が米国の国家安全保障に脅威を与えると判断される場合に、政権に追加関税などの輸入制限措置を発動する権限を認めている。米国は第1次トランプ政権下の2018年3月に、鉄鋼製品に25%、アルミ製品に10%の追加関税の賦課を開始した。そして2025年3月に、鉄鋼製品の追加関税は25%に据え置きつつ、アルミ製品の追加関税は10%から25%に引き上げた(2025年2月12日記事参照、注3)。
(注1)基本的には製品の輸入申告価格に追加関税が課されるが、一部の鉄鋼・アルミ派生品については、各派生品が含有する鉄鋼・アルミ材の価格に対してのみ、追加関税が課される(2025年4月7日記事参照)。
(注2)改定されたのは、大統領令14289号(E.O.14289)第3条(a)(ⅱ)。これまでは、(1)232条に基づく自動車・同部品に対する25%の追加関税の対象物品は、(2)IEEPAに基づくカナダ・メキシコ原産品に対する25%の追加関税を累積徴収せず、また、(2)IEEPAに基づくカナダ・メキシコ原産品に対する25%の追加関税の対象物品は、(3)232条に基づく鉄鋼・アルミ製品に対する25%の追加関税を累積徴収しないとしていた。今回の改定で、自動車・同部品でない鉄鋼・アルミ製品のうち米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)原産地規則を満たさないカナダ・メキシコ原産の輸入品は、改定前の25%から、改定後は50%の追加関税が適用されることとなるとみられる。
(注3)アルミ缶・缶ビールを適用対象に追加するよう、2025年4月に対象品目が更新された(2025年4月7日記事参照)。さらに、商務省産業安全保障局(BIS)は2025年4月に、対象品目の追加要請を受け付けるプロセスを設置する暫定最終規則(IFR)を発表した(2025年5月2日記事参照)。
(葛西泰介)
(米国)
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