第1四半期GDPは農林水産業が好調、かろうじてマイナス成長を回避

(メキシコ)

調査部米州課

2025年05月27日

メキシコの国立統計地理情報院(INEGI)は5月22日、2025年第1四半期(1~3月)の産業分野別実質GDP成長率PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(注)を発表した。GDP全体では前年同期比0.8%、季節調整済み前期比は0.20%となった。

前年同期比を産業別にみると、農牧・林業・水産は7.2%増、サービス産業は1.3%増のプラス成長だったが、鉱工業は0.7%減のマイナス成長だった(添付資料表1参照)。季節調整済み前期比では、農牧・林業・水産は7.84%増だったが、鉱工業は0.13%減、サービス産業は0.08%減とマイナスだった(添付資料表2参照)。農牧・林業・水産の好調が目立った一方で、鉱工業とサービス産業がほぼ横ばいの結果となった。

鉱工業の内訳をみると、前年同期比でマイナスだった鉱業(9.3%減)、電気・ガス・水道(0.8%減)、建設(0.2%減)に対して、製造業は0.7%増と第4四半期のマイナスからプラス成長に転じた。前期比でも0.22%増となり、若干の回復を見せた。製造業には輸出需要が大きく影響を与えるが、第1四半期の工業製品・同部品の輸出額は前年同期比で5.5%、3月単月では10.0%増加した。最大の貿易相手国である米国による追加関税措置が発動される前の駆け込み輸出が行われたことも関係するとみられる。

サービス産業では、卸売業が前年同期比4.6%減、前期比でも3.04%減だったのに対し、小売業が前年同期比3.8%増、前期比0.84%増と堅調だった。ビジネス支援サービスは、労働法改正による人材派遣の原則禁止(2021年4月27日記事2021年8月2日記事参照)により2021年第3四半期以降不振が続き、2024年は前年同期比で4四半期連続のマイナス成長だったが、当期は前年同期比14.4%増とプラスに転じた。

2025年4月には、米国金融大手シティグループが2四半期連続の前期比マイナス成長を予測するなど、景気後退局面への突入も示唆されていた中(2025年4月25日記事参照)、2025年第1四半期はプラス成長に転じる結果となった。エドガー・アマドール大蔵公債相は5月22日の記者会見で、「経済は順調であり、今後も拡大することを示している」とコメントした。一方、英国のシンクタンクのパンテオン・マクロエコノミクスのエコノミスト、アンドレス・アバディア氏は「今期の成長は、変動の激しい第一次産業による影響が大きく、楽観的な見方はできない」とメキシコ経済の不安定さを指摘している(「エル・エコノミスタ」紙5月22日)。

(注)INEGIは、2023年第2四半期(4~6月)から国民経済計算の基準年を2013年から2018年に変更したため、数値が過去にさかのぼって修正されており、2023年第1四半期(1~3月)以前の実質GDP成長率(2023年5月29日記事参照)の数値とは継続性がない。

(加藤遥平)

(メキシコ)

ビジネス短信 d6324fe4884f5f88