米デトロイトスリー、メキシコ・カナダに先んじた米英の通商交渉合意に反発

(米国、英国)

シカゴ発

2025年05月12日

米国の大手自動車メーカーのフォード、ゼネラルモーターズ(GM)、ステランティス(3社はデトロイトスリーと呼ばれる)を代表する米自動車政策評議会(AAPC)は5月8日、同日にトランプ政権が発表した英国との通商交渉合意(2025年5月9日記事参照)を批判する声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。同評議会のマット・ブラント会長は「現政権が北米のパートナー(メキシコとカナダ)よりも英国を優先したことに失望している」とし、「この合意により、米国製部品がほとんど含まれない英国製自動車を輸入する方が、米国製の部品が半分以上使用されているメキシコやカナダから輸入する米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に準拠した自動車よりも、安価になるだろう」としている。さらに、今回の合意が「米国自動車メーカー、サプライヤー、自動車労働者に打撃を与える」とし、「アジアや欧州の競合他社との今後の交渉における先例とならないことを希望する」と続けた。今回の米英の合意では、英国は年間10万台までの自動車を10%の関税率で米国に輸出することができる。これは、英国が2024年に対米輸出した自動車台数のほぼすべてに相当している。

トランプ政権は、2025年4月29日に米国に輸入される自動車と自動車部品への追加関税に対する緩和措置を発表したが(2025年4月30日記事参照)、各自動車メーカーはその後の四半期決算発表で、関税によるマイナスの影響に言及している。GMは関税措置によるコスト増で2025年の利払い前・税引き前利益(EBIT)が最大50億ドル減少すると発表(2025年5月7日記事参照)、フォードは関税コストが最大25億ドル、2025年のEBITへの影響は最大15億ドルに上ると発表している(2025年5月7日記事参照)。また、ステランティスは4月30日に「関税関連の不確実性」により、通期見通しの発表を見送っている。

(星野香織)

(米国、英国)

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