米商務省、テックハブへの助成を一部見直し、2025年夏に新たな資金供与機会通知を発表へ

(米国)

ニューヨーク発

2025年05月20日

米国商務省は5月16日、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)に基づくテックハブへの助成の一部を見直すとともに、新たな資金供与機会通知(NOFO)を行うとのハワード・ラトニック長官の声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

商務省はバイデン前政権下の2023年10月に、先端技術分野の研究開発に従事する全米31カ所のテックハブを指定した(2023年10月24日記事参照)。翌2024年7月にその中から助成対象となる12のハブを発表し(2024年7月3日記事参照)、バイデン前政権の終了間際の2025年1月には、さらに6つのハブを追加で助成対象に選定した(2025年1月15日記事参照)。だが、ラトニック氏は今回、追加指定された6つのハブについて、「(選定)プロセスは急ごしらえで不透明かつ不公平で、当局は申請予定者に競争情報を開示せず、ほぼ1年前に提出された古い申請書に基づいて受賞者を決定した」と批判した。その上で、経済開発局(EDA)が2025年夏に新たなNOFOを公表し、2026年初頭に選定結果を発表する予定だと明らかにした。商務省が同日に発表したファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、EDAはこれら6つのハブに対し、助成金拠出に関わる調整は行っていなかった。

ファクトシートによると、今後発表が予定されているNOFOの概要は次のとおり。

  • 応募要件に、プロジェクトが納税者にとってどのように有益かを説明する条項を追加する。
  • 応募資格があるのは、2023年10月に選定された31のテックハブのうち、助成が未確定の19のハブ。これには、1月に選定された6つのハブも含まれ、助成金を得るためには、あらためて申請しなければならない。
  • 応募要件から、ドナルド・トランプ大統領が発出した、連邦政府の多様性、公平性、包摂性(DEI)を終了する大統領令(2025年1月28日記事参照)や、エネルギーに関係する大統領令(2025年1月22日記事参照)などと矛盾する前政権の政策優先事項に関する文言を削除する。労働組合を優先する文言や「良い雇用原則」(注)に関する文言も削除する。
  • 助成が発表されながら、再度申請する必要がある6つのテックハブについては、優先的に審査する。

今回のラトニック氏の声明は、第2次トランプ政権発足以降、CHIPSプラス法の助成に関する初めての大きな発表となる。トランプ氏はしばしば、CHIPSプラス法に対する批判的な発言をしていたが、同法に基づく助成の運営方針は示していなかった。今回は、既に助成金を交付したハブは見直しの対象となっていないものの、交付されていなかったハブが見直し対象となった。企業向け助成についても(2025年1月14日記事参照)、今後どのような方針がとられるのか、テックハブのNOFOと併せて注目される。

(注)労働省と商務省が2022年6月に発表した、労働者にとって質の高い雇用を実現するためのロードマップを提供する取り組み。「良い雇用」の本質的な要素として、採用と雇用、給与と福利厚生、雇用安定とキャリアアップ、団体交渉権、労働条件を提示しているほか、DEIを優先する方針などを掲げている。

(赤平大寿)

(米国)

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