米相互関税の対象外品目は約1兆ドル規模、今後の分野別関税の発動次第で減少の可能性
(米国、世界)
調査部米州課
2025年04月22日
米国のトランプ政権は4月5日、相互関税の一環として、全ての国からの輸入に10%のベースライン関税を課した(2025年4月11日記事参照)。相互関税は原則全ての輸入品が対象だが、カナダとメキシコの原産品や、1962年通商拡大法232条に基づいて追加関税が課されている鉄鋼・アルミニウム製品や自動車・同部品などには適用されない。また、相互関税を定めた大統領令の付属書2で列挙している1,000以上の品目も対象外となる。この付属書2のみが、第2次トランプ政権の発足以降に発動された追加関税を無条件で免れている品目群といえる。
ジェトロが付属書2の品目の輸入額を米国の貿易統計(通関ベース)を基に調べたところ、2024年の輸入額は9,958億ドルとなった(注1)。これは同年の輸入総額(3兆2,674億ドル)の30.5%に相当する。品目別にみると、原油、医薬品、自動データ処理装置などが輸入額の上位に並ぶ(添付資料表1参照)。
付属書2の品目の輸入額を国・地域別(注2)にみると、中国が1,197億ドルと最も大きく、同国からの輸入総額(4,389億ドル)の27.3%を占める(添付資料表2参照)。品目別では、トランプ政権が4月11日に相互関税からの除外を発表したスマートフォンとノートパソコンの輸入額が大きい。アイルランド(783億ドル)、台湾(761億ドル)、ベトナム(408億ドル)、韓国(285億ドル)などが中国に続く。日本は189億ドルで、日本からの輸入総額(1,482億ドル)の12.7%に当たる。品目別にみると、免疫産品や半導体デバイス・集積回路製造機器の輸入額が大きい。
付属書2には、トランプ政権が232条に基づいて調査を行っている品目も含まれている。銅、木材、半導体、医薬品、重要鉱物の5分野に属する品目だ(2025年4月16日記事参照)。これら品目については、相互関税が課されない一方、232条調査の結果次第で今後、追加関税などの輸入制限措置が課される可能性があることには留意が必要だ。
232条関税の対象となっている鉄鋼・アルミ製品の輸入額は2,103億ドル、自動車・同部品は6,015億ドルだった(注3、添付資料表3参照)。自動車はメキシコ(787億ドル)や日本(400億ドル)、韓国(374億ドル)からの輸入額が大きく、自動車部品はメキシコからが1,243億ドルで最大だ。なお、相互関税の対象からは、出版物などの「情報資料」も除外されており、これに該当する品目の輸入額は149億ドルだった(注4)。
(注1)付属書2と、相互関税からの半導体関連製品の除外に関する大統領覚書(2025年4月14日記事参照)で指定されている品目の米国関税分類番号(HTSコード)を基に輸入額を計算した。
(注2)相互関税の対象外となっているカナダとメキシコを除く。
(注3)鉄鋼・アルミ製品、自動車・同部品、それらの派生品に対する追加関税を定めた大統領布告で指定されている品目のHTSコードを基に輸入額を計算した。
(注4)米国税関・国境警備局(CBP)が、相互関税の根拠法となっている国際緊急経済権限法(IEEPA)に関する「よくある質問」で、「情報資料」に該当する可能性があるとしている品目のHTSコードを基に計算した。
(甲斐野裕之)
(米国、世界)
ビジネス短信 5bb1f59a0aca19d5