中国商務部、カナダの対中EV追加関税賦課などを中国への「差別的措置」と判定
(中国、カナダ)
調査部中国北アジア課
2025年03月10日
中国商務部は3月8日、カナダが中国に対して実施している各種措置に関する「反差別調査」の結果を発表した(即日施行)。同調査は「対外貿易法」の規定に基づき、カナダが中国産の電気自動車(EV)や鉄鋼、アルミニウム製品に取っている追加関税賦課などの措置(2024年8月30日記事参照)を対象に、中国商務部が2024年9月26日から実施していたものとなる(2024年10月7日記事参照)。
発表では、同調査の結果、カナダの取っている関連措置は「対外貿易法」第7条に規定する「貿易面で中国に対して行われる差別的な禁止・制限、もしくはその他類似の措置」に該当し、正常な貿易秩序に影響を与え、中国にとって深刻なマイナスの影響をもたらすと判定した(注1、注2)。
その上で、カナダの措置による影響を取り除くため、「対外貿易法」「関税法」に基づき(注3)、「反差別措置」として、カナダ産の一部の輸入品に対する追加関税賦課を行うとした。同関連措置については別途公告で定めるとした。
また、次の状況が生じた際には、上記の(中国側が取る)措置について、手続きにのっとり調整、中止あるいは取り消すことができるとも規定した。
- 調査対象の国・地域政府が調査対象の措置や方法を調整、あるいは取り消した場合。
- 調査対象の国・地域政府が中国の被った損害について、適切な補償を行った場合。
- 調査対象の国・地域政府が中国との協議などを通じて解決策に合意した場合。
- 調査対象の国・地域政府がより実質的な措置を取った場合。
- その他適当な場合。
状況に応じてさらなる対抗措置実施も示唆
このほか、今回調査対象となっていたカナダによる対中措置のうち、いまだ実施されていない措置(中国から輸入される重要鉱物、電池・同部品、太陽光発電関連製品、半導体に対する追加関税賦課など)について、カナダ政府がより実質的な措置を取った場合、調査機関は客観的かつ総合的な評価を行った上で、相応の「反差別措置」を提言するとした。
なお、中国国務院関税税則委員会は今回の発表と同じ3月8日、カナダ産の一部輸入品に対する追加関税賦課を発表している(2025年3月10日記事参照)。
(注1)今回の判定に関する詳細を記載した付属文書によると、調査機関は中国の関連業界団体、165社の関連企業にアンケート調査を行ったほか、実地調査も実施した。なお、今回の調査開始時点の公告で、カナダ政府は公告の公布日から30日以内に中国との政府間協議を行う申請を商務部に提出できるとされていたが、カナダ政府からは定められた期限内に同申請を受け取っていないとしている。
(注2)判定に関する詳細を記載した付属文書では、調査対象となったカナダの措置について、政策目的、制定手続き、措置の実施面で、明らかに中国に対する差別的な取り扱いが見られると指摘したほか、カナダの措置が中国のEVや鉄鋼、アルミ関連製品の貿易、同関連産業の競争力、生産、経営、投資、サプライチェーンなどに及ぼした影響について分析している。
(注3)「対外貿易法」第7条では、ある国・地域が中国に対して貿易面で差別的な禁止・制限、もしくはその他類似の措置を取った場合、中国は実情に応じて当該国・地域に対して相応の措置を取ることができるとしている。また、2024年12月1日から施行された「関税法」第18条では、「ある国・地域が中国と締結・ともに参加している国際条約・協定に違反し、中国に対して貿易の禁止・制限・追加関税賦課、その他の正常な貿易に影響を与える措置を取る場合、当該国・地域原産の輸入貨物に対して、報復的な関税を徴収するなどの措置を取ることができる」と規定している。
(小宮昇平)
(中国、カナダ)
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