米財務省、ロシアの国有海運大手に制裁、原油価格上限に関する影響分析結果も発表

(米国、ロシア、ウクライナ)

ニューヨーク発

2024年02月27日

米国財務省外国資産管理局(OFAC)は2月23日、ロシアの国有企業で海運大手のソフコムフロートと同社が所有する船舶14隻を、金融制裁の対象である「特別指定国民(SDN)」に指定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。2021年4月に出された大統領令14024号(2021年4月16日記事参照)に基づき、ロシア政府の海洋部門として同政府のために操業したことなどを理由とした。財務省は2022年3月に、同大統領令の制裁対象に海洋分野を追加していた(2022年4月1日記事参照、注1)。

SDNに指定された事業体は、在米資産の凍結や、米国人(注2)との資金・物品・サービスの取引禁止が科される(注3)。ただしOFACは、今回SDNに指定された14隻から原油などの荷揚げを45日間許可する一般許可、およびソフコムフロートが所有するほかの全ての船舶との取引を認める一般許可を発行する。財務省の発表によると、ソフコムフロートはオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国の制裁対象でもあり、EUも一定の規制対象としている。

また財務省は同日、ロシア産原油に対する上限価格設定がもたらした影響について、分析結果を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。米国、日本を含むG7諸国とEU、オーストラリアから成る「上限価格連合」は、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、2022年12月以降、ロシア産原油に1バレル当たり60ドルの上限価格を設定している(2022年12月6日記事参照)。その後、2023年10月に同政策に基づき初めての制裁を科し、ロシアに対して制裁やそのほかの経済措置を講じることや、上限価格の順守を強化するための勧告などを発表した(2023年10月13日記事参照)。

財務省は、上限価格を設定した2022年12月から勧告などを出した2023年10月までを第1段階、勧告以降を第2段階としている。第1段階は、ロシアが原油輸出から得られる税収を40%減少させ、成功したとした上で、今回の発表は、第2段階目を対象としている。第2段階では、ロシアの利益の制限とエネルギー市場の安定という2つの目標を掲げており、今回の分析結果も同目標に沿った内容となっている。主な分析結果は次のとおり。

  • 第2段階が始まって以降、ロシアの原油販売価格は著しく低下している。この変化は、世界的な原油価格下落だけでなく、他の原油供給国に比べてロシアが値引きを大幅に拡大したことにもよる。値引き額は、10月の1バレル当たり12~13ドルから、この1カ月で約19ドルに上昇した。
  • エネルギー市場関係者、アナリスト、ロシアの原油担当者自身でさえも、ロシア産原油の値引き額の上昇を、上限価格連合による第2段階以降の執行強化に結び付けている。
  • ロシアの原油輸出量は、ここ数カ月安定している。価格上限は、世界の消費者とビジネスへ安定したエネルギー供給を維持している。同時に、主要な制裁執行措置とともに、ロシアが原油の販売によって得る利益を減少させている。

なお、OFACは2月23日に、ロシアに対する大規模制裁も併せて発表している(2024年2月26日記事参照)。

(注1)当該大統領令は、その後も改正され、制裁対象分野が拡大している(2024年2月13日記事参照)。

(注2)米国人には、米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人が含まれる。

(注3)SDNが、直接または間接的に50%以上所有する事業体も当該制裁の対象となる。財務省によるロシアのウクライナ侵攻に関する制裁の全容は、同省の「ロシア関連制裁」のポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで確認できる。また、制裁対象に指定した個人・企業などは、OFACのデータベース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから検索できる。

(赤平大寿)

(米国、ロシア、ウクライナ)

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