バイデン米大統領が新たなロシア制裁を発動、選挙介入などが理由
(米国、ロシア)
ニューヨーク発
2021年04月16日
ジョー・バイデン米国大統領は4月15日、米国大統領選挙への介入や米国企業へのサイバー攻撃などを理由に、ロシアへの制裁を強化する大統領令に署名した。同令を受けて財務省は、米国金融機関にロシア中央銀行などとの取引の一部を禁止するとともに、合計で25の企業・機関、21の個人を特別指定国民(SDN)に指定した。国務省も、在米のロシア外交官10人の国外退去を決定した。バイデン政権は、状況次第で制裁内容を拡大するとしている。
ホワイトハウスのファクトシートでは、今回発表された制裁の主な理由として、ロシアによる(1)2020年米国大統領選挙への介入、(2)ウクライナ南部クリミア地域の支配と人権抑圧の継続、(3)米国ソフトウエア企業ソーラーウィンズへのサイバー攻撃を挙げており、財務省もそれぞれの理由に基づいたプレスリリースを発表している。
まず、財務省は(1)に関して、ロシア政府は企業も活用した上で米国有権者に影響を与えるような誤情報の拡散を行っていたとして、16の企業・機関と16人の個人をSDNに指定したと発表した。(2)に関しては、EU、英国、カナダ、オーストラリアと足並みをそろえた制裁として、5人の個人と3つの企業・機関をSDNに指定した。(3)に関しては、ロシア政府がソーラーウィンズのソフトウエアを通じて同社の顧客である政府機関、企業に大規模サイバー攻撃を仕掛けた事件などに加担しているとして、6つの技術系企業・機関をSDNに指定した(注1)。SDNに指定された対象には、(1)在米資産の凍結、(2)米国人(注2)との資金・物品・サービスの取引禁止が科される。また、同社が直接または間接的に50%以上を所有する事業体も、同じ制裁の対象となる。
財務省はこのほか、ロシアによる有害行為全般に対する制裁として、米金融機関に対して6月14日以降に、(1)ロシアの中央銀行、国民福祉基金、財務省が新規に発行した債券をプライマリー・マーケットで取引することの禁止、(2)同3機関への融資の禁止を命ずる行政命令を発表した。財務省が同日に発表した上記制裁内容の詳細は、同省ウェブページで確認可能となっている。
バイデン大統領は4月13日にロシアのウラジーミル・プーチン大統領と電話会談を行っており、その時点で制裁発動を示唆しつつ、安定的で予見可能な関係の構築のために第三国での首脳会談を提案していた。ロシア政府により設立されたシンクタンク、ロシア国際問題評議会のアンドレイ・コルトゥノフ会長は、今回の制裁は穏健なものだったとして「ロシアの反応が首脳会談を阻むことはないだろう」との見方を示している(ブルームバーグ4月15日)。
(注1)ロシアによるサイバー攻撃に関しては、連邦捜査局(FBI)など米国諜報(ちょうほう)機関が4月15 日、狙われやすいポイントに関する注意喚起を発表している。
(注2)米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す。
(磯部真一)
(米国、ロシア)
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