紅海の物流混乱、ロジスティクス大手による現場の見方

(イエメン、スイス、南アフリカ共和国、アラブ首長国連邦、世界)

ドバイ発

2024年01月19日

イエメンの武装組織フーシ派が紅海などで船舶への攻撃を繰り返していることを受け、物流の混乱が発生している(2023年12月25日記事12月28日記事2024年1月9日記事1月10日記事1月11日記事参照)。紅海の混乱によるコンテナ船の物流の現状について、スイスのロジスティクス大手キューネ・アンド・ナーゲル上級副社長のパオロ・モントローネ氏に話を聞いた(インタビュー日:2024年1月15日)。概要は次のとおり。

(問)今回の紅海の混乱で、アジア発欧州向けの海運はどのような状況か。

(答)世界の貿易の約3分の1が紅海を経由すると言われており、その影響の大きさは計り知れない。南アフリカ共和国の喜望峰ルートへの変更により、仕向け地に到着するまでにかかる運航日数は、往復でおよそ4週間増える。それによる機会損失、当該ルートの需要増加によるコンテナ価格や海上保険料の上昇などにより、全てのコストが上がっている。

新型コロナ禍の時はじわじわと物流の混乱および価格上昇が生じたが、今回はごく短期間で混乱と価格上昇が起こったので、よりインパクトが大きい。1月15日現在、紅海の状況により影響を受ける(迂回する)船舶を359隻確認している。それらの船舶のコンテナの総容量は474万TEU(20フィートコンテナ換算)と推定される。ルート調整は初回だけシステム上に記録され、その後は迂回として記録されないため、今後、実際にどのくらいの船舶がルート変更の影響を受けたのか追跡するのが難しくなる。

(問)喜望峰回りのルートが逼迫することにより、代替輸送に切り替える動きもあるか。

(答)新規のブッキングを停止しているケースや、急ぎの場合は海上貨物をドバイ経由の航空便にするなど、代替輸送に切り替えているケースもあるようだ。需要が増加すれば、航空貨物運賃の値上げも予想される。

(問)各産業や企業への影響の今後の見通しは。

(答)サプライチェーンの混乱は企業に大きな影響を与えている。例えば、欧州にある自動車メーカーの工場は、部品の納入が間に合わないことから、工場の稼働を停止した。各企業は新型コロナ禍の時もそうだが、輸送に関して複数の手段を日頃から確保しておくべきだろう。今後の見通しは誰も分からない。もし仮に、明日から安全に紅海、スエズ運河ルートを通過することができることになっても、海運が通常の状態に戻るまでには少なくとも2カ月は要するだろう。

(清水美香)

(イエメン、スイス、南アフリカ共和国、アラブ首長国連邦、世界)

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