米主要港、11月の小売業者向け輸入コンテナ量は前月比8%減、紅海での船舶攻撃に懸念高まる

(米国、日本、イスラエル、イエメン)

ニューヨーク発

2024年01月11日

全米小売業協会(NRF)と物流コンサルタント会社のハケット・アソシエイツが発表した「グローバル・ポート・トラッカー報告」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(1月8日)によると、2023年11月の米国小売業者向けの主要輸入港(注1)の輸入コンテナ量は、前月比8%減、前年同月比6.6%増の189万TEU(1TEUは20フィートコンテナ換算、添付資料図参照)となり、NRFが2023年12月時点に予測した196万TEU(2023年12月12日記事参照)を下回った。今後の見通しについては、数量ベースではホリデーシーズンの繁忙期終了に伴って3月まで徐々に減少し、4月以降に再び増加し始めるという例年どおりの動きが見込まれるが、前年同月比ベースでは伸び幅が5月にマイナスに転じる見込みだ。

今回の発表の中で、NRFのサプライチェーン・税関担当バイスプレジデントのジョナサン・ゴールド氏は「この時期は、ホリデーシーズンの繁忙期の後にサプライチェーンが一息つく伝統的な減速期だが、常に新たな課題が目の前に迫っている」とし、中東の紅海周辺で発生しているイエメンの武装組織フーシ派による貨物船への攻撃について懸念を示した。同氏は「この攻撃による混乱が小売りのサプライチェーンに再び不安定性をもたらしている。小売業者は輸送会社と協力して影響を最小限に抑えるための緩和策を講じているが、その結果として輸送期間の長期化やコスト増が発生している」と述べた。

紅海周辺では2023年11月中旬以降、イスラム原理主義組織ハマスとの連帯を掲げるフーシ派が、イスラエルへの対抗として紅海を船行する商船への攻撃を繰り返している(注2)。国連安保理は1月10日、商船や商業船に対する攻撃を直ちに中止することを求める決議案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを採択したが、これまで海運業者は、紅海とスエズ運河経由の航路を避け、南アフリカ共和国の喜望峰経由の航路に変更する動きを拡大していた(2024年1月10日記事参照)。ロイター(1月4日)によると、米国東海岸に到着する貨物の最大30%がスエズ運河を経由しており、イケアやウォルマート、アマゾンなどの大手小売業者を含む多くの企業向けの輸送に、既に遅延が報告されている。物流業界の幹部らは、アジアからの輸入品の一部の輸送先が米国西海岸に変更されると予想しており、今後は西海岸の輸入コンテナ量が増加する可能性がある。

なお、NRFによると、今後の見通しとして、2023年12月は前年同月比9%増の189万TEU、2023年通年は前年比12.8%減の2,230万TEUと予測している。また、2024年第1四半期の見通しについては、は前年同月比の増加傾向は続くと予測しているが、その伸び幅は2023年12月時点の予測から下方修正されており、1月は6.6%増から6.1%増、2月は14.5%増から13.8%増、3月は7.7%増から4.7%増とした。また、第2四半期以降は前年同月比の伸びがさらに失速し、4月に0.2%増となり、5月には0.8%減とマイナスに転じる見込みだ。

(注1)主要輸入港は、米国西海岸のロサンゼルス/ロングビーチ、オークランド、シアトルおよびタコマ、東海岸のニューヨーク/ニュージャージー、バージニア、チャールストン、サバンナ、エバーグレーズ、マイアミおよびジャクソンビル、メキシコ湾岸のヒューストンの各港を指す。

(注2)イスラエルとハマスの衝突については、ジェトロの特集ページを参照。

(樫葉さくら)

(米国、日本、イスラエル、イエメン)

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