バイデン米政権、サプライチェーン強靭化への新たな対策発表

(米国)

ニューヨーク発

2023年11月28日

米国のジョー・バイデン大統領は11月27日、閣僚メンバーで構成する「サプライチェーン強靭化諮問委員会」の設立を含むサプライチェーン強靭(きょうじん)化のための新たな対策を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

バイデン政権は、新型コロナウイルス禍を受けた世界的なサプライチェーンの混乱が続く2021年1月に発足し、翌2月の大統領令(2021年2月26日記事参照)を軸に、重要製品分野のサプライチェーン強化に取り組んできた。特に重要と位置付けた半導体や大容量バッテリー、重要鉱物、医薬品分野については、同年6月に(2021年6月10日記事6月11日記事参照)、それ以外の防衛、公衆衛生、生物学的危機管理、情報通信技術(ICT)、エネルギー、運輸、農産物・食料生産分野については2022年2月に、現状と対策をまとめた報告書を発表している(2022年2月28日記事参照)。これらに取り組みながら議会と協力して、2021年11月にはインフラ投資雇用法(IIJA、2021年11月9日記事参照)、2022年8月にはCHIPSおよび科学(CHIPSプラス)法(2022年8月10日記事参照)とインフレ削減法(IRA、2022年8月17日記事参照)を成立させている。

バイデン政権は今回、約30の新たな対策を発表した。その多くは関連省庁の長で構成する諮問委員会を通じた省庁横断的なものとなる。例えば、産業を所管する商務省に「サプライチェーンセンター」を立ち上げ、他の省庁や産学と連携して産業分野ごとにデータ分析を行い、リスクをモニタリングしていくとしている。また、運輸省が中心となり、モノの流通の円滑化を図るための官民プログラム「フレイト・ロジスティクス・オプティマイゼーション・ワークス(FLOW)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を活用したサプライチェーン混乱の早期警告などを行っていく。このほか、重要医薬品の国内製造力強化のために国防生産法(DPA)を利用して保健福祉省を通じた資金拠出を可能とするほか、エネルギー省、農務省、国防総省からも関連分野のサプライチェーン強化に向けた資金拠出が発表された。サンフランシスコで先日署名されたインド太平洋経済枠組み(IPEF)のサプライチェーン協定など多国間の枠組みも活用していくとしている(2023年11月17日記事参照)。

諮問委員会は今後、4年ごとにサプライチェーンの状況を見直すとしており、1回目の報告を2024年12月31日までに行うとしている。バイデン大統領は記者会見で、自身の経済政策「バイデノミクス」の狙いの中低所得層の底上げを今回の対策で後押しするとともに、全米の平均的な家計が負担するコストを下げていくと強調した。

(磯部真一)

(米国)

ビジネス短信 e4f208cc87f61440