バイデン米大統領、サプライチェーン強化に向けた大統領令に署名

(米国)

ニューヨーク発

2021年02月26日

ジョー・バイデン米国大統領は2月24日、重要な製品や材料における米国のサプライチェーンの回復力を強化するための大統領令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに署名した。

バイデン大統領はその中で、新型コロナウイルスのパンデミックやその他の生物学的脅威、サイバー攻撃、異常気象、テロ攻撃、地政学的・経済的競争などにより、生産能力が低下し、重要な製品やサービスの供給が減少する恐れがあるとし、経済的繁栄と国家安全保障を確保するためには、強靭(きょうじん)で、多様で、安全なサプライチェーンが必要だと説明した。また、価値観を共有する同盟国やパートナーと協力して国際的な緊急事態に対応する能力を強化するとした。

大統領令ではまず、4省の長官に対して、大統領令署名日の24日から100日以内に、各分野のサプライチェーンにおけるリスクを特定し、そのリスクへの対処方法を提言する報告書を大統領に提出するよう指示した。具体的には、商務長官が半導体製造や先端パッケージング、エネルギー長官が電気自動車用バッテリーを含む大容量バッテリー、国防長官が希土類(レアアース)を含む重要鉱物など、保健福祉長官が医薬品および医薬品有効成分のサプライチェーンの見直しをそれぞれ担当する。

さらに、防衛、公衆衛生および生物学的危機管理、情報通信技術(ICT)、エネルギー、運輸、農産物・食料生産の各産業を所管する省庁に対して、大統領令の署名から1年以内に、それぞれの分野のサプライチェーンを評価する報告書を提出するよう指示した。評価に際しては、対象となる重要部材や、サプライチェーンに影響を与える環境や経済、人権などに関連するリスクについて見直す。また、重要な製造設備の場所や必要となる国内の製造能力、重要部材の代替品の入手可能性、既存のサプライチェーンを支える輸送システムの役割などを含めた、不測の事態時のサプライチェーンの強靭性についても評価する。報告書には、サプライチェーンの国内回帰など強靭性のあるサプライチェーンを確保するための具体的な政策提言も含まれる。

大統領令の実施に当たっては、国家安全保障担当大統領補佐官(APNSA)と経済政策担当大統領補佐官(APEP)が関連省庁の対応を調整する。

今回の大統領令の背景には、新型コロナウイルスの大流行発生初期の医療従事者のための個人用防護具や、最近の半導体チップの供給不足による産業界への打撃がある。特に、自動車用半導体チップ不足に関しては、専門機関が北米で車両生産が32万台超分減少すると予測するなど、大きな影響が出ている(オートモーティブニュース2月15日)。

(大原典子)

(米国)

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