米国とメキシコがハイレベル経済対話を開催、半導体協力に焦点

(米国、メキシコ)

ニューヨーク発

2023年10月04日

米国とメキシコは9月29日、米国の首都ワシントンで2国間のハイレベル経済対話(HLED)を開催した。HLEDは2021年9月に再開された閣僚級の年次会合で、今回が3回目(注1)。米国からはアントニー・ブリンケン国務長官、ジーナ・レモンド商務長官、キャサリン・タイ通商代表部(USTR)代表、ケン・サラザール駐メキシコ大使が、メキシコからはアリシア・バルセナ外相、ラケル・ブエンロストロ経済相、エステバン・モクテスマ駐米国大使が参加した。

HLEDは、(1)協力体制の再構築、(2)メキシコ南部と中米諸国の持続可能な経済と社会開発の促進、(3)将来の繁栄のためのツール確保、(4)人々への投資の4本柱を中核的な協力分野と位置付けて、両国間の取り組みを進めている。共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、これまでの成果として、両国の環境当局による革新的環境技術の利用促進の取り組み、商業分野でのサイバーセキュリティーにかかる協力、規制協力を通じた医療機器・医薬品貿易の増進、イノベーション促進のための模倣品・海賊版排除にかかる共同キャンペーンの実施、5G(第5世代移動通信システム)など情報通信技術(ICT)分野の投資にかかるフォーラムの開催などを挙げている。両国は新たな可能性のある協力分野として、米国が施行を開始している、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法、注2)やインフレ削減法(IRA、注3)により高まっている製造業投資の機会をいかに捉えるかについても議論を交わした。

USTRが発表したHLEDの成果を柱ごとにまとめたファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは冒頭で、半導体サプライチェーンに関する行動計画として、次の5点が記されている。(1)地域的な半導体サプライチェーンの統合を支援する、(2)投資環境の改善と、組み立て・試験・パッケージング(ATP)分野の新規投資の誘致を通じて既存の活動を調整する、(3)地域内に存在しない活動または拡張の可能性のある分野への投資の多様化を促進する、(4)投資の促進に向けた州・自治体レベルの対話を活性化させる、(5)地域内での労働力開発の取り組みを支援する。両国閣僚による記者会見でも、半導体サプライチェーンでの協力に焦点が当てられた。CHIPSプラス法を所管するレモンド商務長官は、メキシコには半導体サプライチェーンがもたらす経済的利益に参加する大きな機会があるとし、HLEDを通じてメキシコの労働者・産業界にも利益をもたらすよう連携していく意向を示した。両国は、カナダを加えた「北米半導体会議(NASC)」でも3カ国間での半導体サプライチェーン強化に取り組んでいる(2023年6月12日記事参照)。今後一層、域内での産学官を交えた半導体産業振興の動きが盛り上がりそうだ。

(注1)1回目の概要は2021年9月13日記事参照。2回目の概要は2022年、9月14日記事参照

(注2)米国内での半導体関連投資に対する資金援助を含む法律。2022年8月に成立し、5年間で約527億ドルの予算を確保している。現時点までに第3弾の資金援助概要が発表されている(2023年10月3日記事参照)。

(注3)電気自動車(EV)の普及を含むクリーンエネルギー関連の投資への税額控除など、気候変動対策に10年で約3,900億ドルの予算を確保した法律。2022年8月に成立しており、バイデン政権が2023年8月に施行後1年間の成果を発表している(2023年8月18日記事参照)。

(磯部真一)

(米国、メキシコ)

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