米インフレ削減法発効1周年でバイデン大統領が声明、経費節減効果を強調して中間層に訴求

(米国)

ニューヨーク発

2023年08月18日

米国のジョー・バイデン大統領は816日、気候変動対策や医療保険制度改革、歳入改革などを軸とするインフレ削減法(IRA)(2022年8月17日記事2022年10月6付地域・分析レポート参照)の発効1周年を記念して声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

IRAに関するこの1年間の成果として、主として以下の点を挙げた。

1に、気候変動対策に関しては、(1)電気自動車(EV)のサプライチェーン(700億ドル以上)や太陽光発電製造(100億ドル以上)を含め、民間部門が1,100億ドル以上のクリーンエネルギー関連投資計画を発表したこと、(2)クリーンエネルギーや気候変動対策関連の投資が17万人以上の雇用を創出したこと、(3)プロジェクト開発者が800以上のクリーンエネルギー発電プロジェクトに1,220億ドル相当の投資を計画していること、(4)家庭向けの税額控除として、効率性の高い冷暖房用電気ヒートポンプの設置に最大2,000ドル(年間平均500ドル以上の光熱費節約効果)、住宅のエネルギー効率改善に対する取り組みに年間最大1,200ドル(ドア:最大500ドル、窓:最大600ドル、断熱材費用:最大30%など)、屋上への太陽光発電装置や蓄電池の設置費用の最大30%(年間400ドルの光熱費節約効果)、クリーンビークル(注)購入において新車は最大7,500ドル、中古車は最大4,000ドル、などを導入したこと、(5)低所得者向けの集合住宅のエネルギー・水効率と気候変動耐性の改善に向けた83,700万ドル規模の補助金や40億ドル規模の融資などを導入したこと、などを挙げた。

2に、医療保険改革に関しては、(1)無保険率が歴史的な低水準に達し、1,500万人近くの国民が保険料を年間平均800ドル節約できていること、(2)メディケアに加入している高齢者のインスリン注射について、これまで月額400ドル近くかかっていた費用に上限を設けて月額35ドルに引き下げたこと、(3)メディケア加入者のワクチン接種を無償化したこと、(42025年からメディケア受給者の処方箋薬費用の上限を年間2,000ドルとすること(メディケア受給者の3分の1に年間平均400ドルの節約効果、重篤な病気の治療を受けている180万人の高齢者に年間平均2,500ドルの節約効果)などを挙げた。

3に、歳入改革については、(1)大企業に利益に対して最低15%の税金を支払うことを義務付けるとともに、自社株買いと償還に対して1%の物品税を賦課する制度改正を2023年から施行し、10年間で3,000億ドルの税金を捻出すること、(2)納税者への電話対応サービスが向上したことなどを挙げた。

今回の発表は、各家庭におけるコスト節約効果を具体的な数値で強調するなど、中間層への訴求を意識した内容といえそうだ。

(注)米国政府がIRAに基づく税額控除の対象車両として採用した呼称。

(加藤翔一)

(米国)

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