2022年の米対内直接投資残高は4.3%増、日本が4年連続で国別首位を維持

(米国、日本)

ニューヨーク発

2023年07月21日

米国商務省は7月20日、2022年末時点の米国の対内直接投資残高が前年比4.3%増の5兆2,548億ドルになったことを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。外国からの直接投資残高は前年末に比べ2,168億ドル拡大したものの、伸び率は前年(9.2%増)を下回った。国別では、日本が4年連続で最大の投資元となっており、化学、コンピュータ・電子製品、卸売りなど主要な投資先の業種で残高の増加がみられた。

投資元の上位5カ国について、日本が前年比0.8%増の7,752億ドルで首位となり、カナダ(6,838億ドル)、英国(6,606億ドル)、ドイツ(6,188億ドル)、フランス(3,602億ドル)がこれに続いた(添付資料図参照)。上位5カ国の順位は前年から変動していないが、日本の増加幅が63億ドルと小幅にとどまったのに対し、カナダと英国はそれぞれ547億ドル、435億ドルと大きく増加した。

業種別では、製造業が全体の42.2%を占め、最大の投資先となった。製造業の中で投資残高最大の化学が225億ドル増の8,413億ドル、これに次ぐ輸送機械が101億ドル増の1,983億ドルとそれぞれ増加した。非製造業では、投資残高最大の金融・保険業が664億ドル減の5,575億ドルとなった一方、これに次ぐ卸売業は539億ドル増の5,119億ドルに拡大した。

日本からの直接投資残高について、2022年末時点の内訳をみると、全体の約2割を占め最大の投資先である化学の投資残高が13億ドル増の1,673億ドルとなった(添付資料表参照)。同業種では、富士フイルムが2022年11月に、ノースカロライナ州に1億8,800万ドルを投じて、細胞培養の培地の生産拠点を新設すると発表した(2022年11月30日記事参照)。同社は2021年3月にも、同州に20億ドルを投じてバイオ医薬品の製造拠点を建設すると明らかにしている(2021年3月23日記事参照)。

製造業で投資残高が化学に次ぐ、輸送機器の投資残高は26億ドル減の643億ドルとなった。自動車関連では、ホンダが2022年10月に韓国のLGエナジーソリューションと、オハイオ州に電気自動車(EV)用のバッテリー工場を設立すると発表した(2022年10月18日記事参照)。両社の投資金額は、総額44億ドルに達する見込みだ。また、パナソニックエナジーも同月、カンザス州にEV用のバッテリー新工場を建設(約40億ドル)すると発表しており(2022年11月2日記事参照)、EVシフトに対応した動きがみられる。

そのほか、製造業の主要業種では、コンピュータ・電子製品の投資残高が19億ドル増の402億ドルに拡大した。同業種では、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズが2022年3月に、アリゾナ州で半導体事業関連に拡張投資(8,800万ドル)を行うと発表したほか(2022年4月4日記事参照)、住友化学が同年9月にテキサス州に半導体用プロセスケミカルの新工場を建設すると明らかにするなど(2022年9月5日記事参照)、日本企業の投資が続いている。

非製造業では、投資残高最大の卸売業の投資残高が75億ドル増の1,327億ドル、金融・保険は180億ドル減の1,040億ドルとなった。

2021年以降に相次いで成立したインフラ投資雇用法(2021年11月成立)、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法、2022年8月成立)、インフレ削減法(IRA、2022年8月成立)に基づく補助金や税額控除などのインセンティブが、外国企業の対米投資を後押しする一方、国内では人手不足や生産コスト高など構造的な課題も抱えている。2022年に低い伸びにとどまった外国からの投資がどこまで回復をみせるのか、今後の動向が注目される。

(米山洋)

(米国、日本)

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