米FRB、大手金融機関23行の財務健全性審査実施、全行が基準をクリア

(米国)

ニューヨーク発

2023年06月29日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は6月28日、大手金融機関23行を対象にした財務健全性審査(ストレステスト)の実施結果を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。前年(2022年6月27日記事参照)に引き続き、全行がFRBの定めた基準をクリアした。

ストレステストは、2008年に起きたリーマン・ショックを契機に導入された。金融危機など深刻な不況に陥った際に、金融機関がそれに耐えうるだけの資本などを備えているか点検する。

今回実施されたストレステストでは、失業率は現状から6.4ポイント上昇、ピーク時には10%まで上昇し、資産価格は大幅に下落、商業用不動産および住宅価格は約40%下落すると想定された。前年のストレステストと同様、厳しい想定の下、2023年第1四半期(1~3月)から2025年第1四半期までの9四半期にかけて、各金融機関の損失や収益、資本がどのように変化するかのシミュレーションが行われた。その結果、損失総額は23行で5,410億ドルに達し、このうち貸し倒れ損失が4,240億ドルと、損失総額の78%を占めた。中でも、商業用不動産と住宅ローンによる損失が1,000億ドル以上、クレジットカードによる損失が1,200億ドルに上るとした。これらは、前年の結果を上回る損失額となった。結果として、自己資本比率は2022年第4四半期の実績値から2.3ポイント低下の10.1%まで下落するとした。ただ、前年の低下幅(2.7ポイント)に比べるとやや小幅で、10.1%という数値自体も最低基準(4.5%)の2倍以上となっている。

一方で、今回のストレステストの対象の23行は、基本的に資産規模2,500億ドル以上の大規模銀行が対象で、シリコンバレー銀行などの信用不安で問題視された、中堅規模の銀行はほとんど対象に含まれていない。また、同じく信用不安で問題視された、金利上昇を受けた銀行が保有する債券などの資産価格下落による財務基盤の悪化については、今回のシナリオには含まれていない。こうした教訓を踏まえて、今後のストレステストの見直しを含む規制強化に向けた動きが、当局の間で議論されている状況だ(2023年5月1日記事参照)。

ファースト・リパブリック銀行の破綻(2023年5月2日記事参照)以降、銀行セクターの信用不安は落ち着きを見せているが、一時身売り報道も出た資産規模全米53位のパックウェスト・バンコープ(2023年5月8日記事参照)は、約35億ドルのローン債権を資産運用会社に売却して財務基盤の強化を急ぐなど、まだ信用不安はくすぶっている。ジャネット・イエレン財務長官は、2023年4~6月期決算の銀行業績が悪化すれば、中小銀行を中心に合併増加の引き金になるとの見通しを示している(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版6月23日)。

(宮野慶太)

(米国)

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