米FRB、前回と同じく政策金利0.25ポイント引き上げ、年内の金利引き下げは否定

(米国)

ニューヨーク発

2023年05月08日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は5月2~3日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を0.25ポイント引き上げ、5.0~5.25%にすることを決定した(添付資料図参照)。米国では3月10日にシリコンバレー銀行(SVB、2023年3月13日記事参照)、3月12日にシグネチャー銀行(2023年3月14日記事参照)、5月1日にファースト・リパブリック銀行(FRC)(2023年5月2日記事参照)が経営破綻するなど、銀行セクターの信用不安が続いているものの、市場の事前予想どおり、前回(2023年3月23日記事参照)と同じ引き上げ幅となった。なお、決定は参加者11人による全会一致だった。

声明文外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、主な変更・追加点として、4月27日に発表された第1四半期(1~3月)のGDP成長率速報値(2023年4月28日記事参照)を踏まえ、「第1四半期の経済活動は緩やかなペースで拡大した」との評価が明記された。また、前回の声明文に盛り込まれた「(インフレ率を長期的に2%に戻すために)いくらか追加の政策決定が適切になるかもしれない」とした表現を削除し、「どの程度の追加の金融政策引き締めが適切かを判断する際、FOMCはこれまでの引き締めの累積と、それが経済活動やインフレに影響を与える時間差、経済・金融情勢を考慮する」として、引き締めが前提だったこれまでの表現を軟化させた。

ジェローム・パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見の冒頭、前回と同様に銀行セクターの信用不安に触れ、3月初旬以降の状況は改善していると述べた上で、銀行システムは健全で強靭(きょうじん)だと強調した。また、政策金利は前回会合での経済見通しで示した2023年末時点の金利水準(5.1%)に達したが、今後の利上げ停止の決定は今回行っておらず、現状では2023年内の利下げは適切ではないとの考えを示した。また、今後景気後退入りの可能性はあるが、後退回避の可能性の方が高いと述べた。

一方で、債務上限問題については(2023年5月2日記事参照)、議会で対応すべき問題としつつ、上限が引き上げられなかった場合、米国経済を守れる可能性は低いと述べた。なお、資産規模全米1位のJPモルガン・チェースがFRCを買収したことに関して、大手銀行は買収を行わないことが望ましく、今回は例外措置とした。現在、資産規模全米53位のパックウェスト・バンコープが身売りを検討と報道されており(ブルームバーグ5月4日)、同銀も戦略的選択肢を検討していると公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますするなど、銀行セクターの信用不安は今もくすぶっている。また、FRBは2022年6月から米国債などの保有資産を圧縮する量的引き締めを進めているが(2022年5月6日記事参照)、財務省は2023年5月3日に国債を買い戻す措置を2024年度から始めると発表した。金融市場にはすでに負荷がかかっており、債務上限問題の行方によっては、パウエル議長も懸念する深刻な景気後退の引き金になりかねない。与野党間で速やかに決着をつけられるか、注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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