米FRB、大手金融機関33行の財務健全性審査実施、全行が基準クリア

(米国)

ニューヨーク発

2022年06月27日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は6月23日、大手金融機関33行を対象にした財務健全性審査(ストレステスト)の実施結果を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、2021年に引き続き、FRBが定めた基準を全行がクリアしたことを明らかにした(2021年6月28日記事参照)。

ストレステストは、2008年に起きたリーマン・ショックを契機に導入され、金融危機など深刻な不況に陥った際に金融機関がそれに耐え得るだけの資本などを備えているか点検する。

今回のストレステストでは、失業率は現状より5ポイント以上上昇し、ピーク時には10%まで上昇、資産価格も大幅下落し、商業用不動産で約40%下落、株価は55%減少するという、2021年よりも厳しい不況を想定の下、今後9四半期にかけて各金融機関の損失や収益、資本がどのように変化するかのシミュレーションを行った。その結果、33行合計で6,120億ドルの損失が発生、特に貸倒損失は4,500億ドル超に達し、自己資本比率は平均9.7%と、2021年実績の12.4%より2.7ポイント下落することとなった。しかし、これは最低基準(4.5%)の2倍以上としている。

ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格と食料価格上昇などを要因とした世界的なインフレを背景に、FRBをはじめ各国中央銀行は金融引き締めを急ぐが、急速な利上げが世界的な景気後退(リセッション)を引き起こすのではないかという懸念が高まっている。FRBの声明文では「米国の銀行の財務は健全であり、深刻なリセッションがあったとしても、銀行は企業や消費者の融資を十分継続でき得るとしている。

米国ではストレステストの個別結果を基に、各行の株主還元策が適切かどうかをFRBが判断することとなっている。今回全行がストレステストをクリアしたことにより、各行は株主還元の実施が可能となることから、今後各行の配当や自社株買いなどの株主還元策の公表が行われる見通しだ。

(宮野慶太)

(米国)

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