米FRB、シリコンバレー銀行破綻の検証結果発表、ファースト・リパブリック銀行も破綻危機の恐れとの報道

(米国)

ニューヨーク発

2023年05月01日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は4月28日、シリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻(2023年3月13日記事参照)について、検証結果の報告書を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

報告書は100ページ以上に及び、SVBの経営破綻の原因を大きく2つに分類した。1つは同行経営幹部のリスク管理の甘さだ。新型コロナウイルス禍による異例の金融緩和の中で、同行の規模は急速に拡大したが、流動性の確保と金利変動リスクによる財務健全性のバランスを見誤り、経営陣はリスク管理に失敗したと断じた。

もう1つはFRB内の監督管理体制の不備だ。SVBが規模を拡大して構造を複雑化させる中で、FRBは同行の脆弱(ぜいじゃく)性を十分に理解しておらず、脆弱性を認識した後でも、これらの問題を迅速に修正するための十分な措置を講じなかったとしている。また、FRB内の人員体制も不十分で、1人の審査官が2~3週間の間に投資ポートフォリオ、流動性、リスクマネジメントの審査を受け持つこともあったという。

人員不足に関連して、連邦預金保険公社(FDIC)も同日、シグネチャー銀行破綻について報告書を公表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)しており(2023年3月14日記事参照)、同報告書でも、FDICが審査に十分な人員を割くことができず、審査の適時性と質に影響を及ぼしたと述べている。また、FRBの報告書は、SNSへの書き込みがSVBからの急速な預金引き上げを招いたと指摘し、新たなリスクに対する監督上の対処も必要とした。

FRBは「SVBの破綻から学んだことを踏まえ、FRBの監督と規制を強化しなければならない」として、ストレステストや流動性要件などについて、資産規模が1,000億ドルを超える銀行に対する規制の再評価や、SVB破綻の際に問題となった満期保有目的債券や売却可能債券の未実現損益の会計処理上の見直しを行う方針を表明している。

SVBの破綻に端を発した信用不安はまだ続いている。経営が不安視されているファースト・リパブリック銀行について(2023年3月17日記事参照)、同行がFDICの管理下に置かれる可能性が高いとの報道から、株価は一時上場来安値をつけた(ブルームバーグ4月28日)。その後、やや持ち直しているものの、同行の2023年第1四半期(1~3月)の預金残高は、2022年末比で約4割減という厳しい流動性不足に陥っているとみられる(CNBC4月24日)。同行は一部の部門の売却を検討しているとされるが、当局や他行からの支援も含め、協議は難航しているもようだ(ブルームバーグ4月28日)。同行の資産規模は2022年12月時点で2,126億ドルと全米14位で、全米16位だったSVB(約2,090億ドル)より大きく、破綻の影響は甚大となる可能性があるため、引き続き同行を取り巻く環境に注視が必要だ。

(宮野慶太)

(米国)

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