米ファースト・リパブリック銀行が経営破綻、買収先はJPモルガン・チェースにスピード決定

(米国)

ニューヨーク発

2023年05月02日

米国連邦預金保険公社(FDIC)は5月1日未明、経営が不安視されていたファースト・リパブリック銀行について(2023年5月1日記事参照)、FDICが管財人となり、米国大手銀行JPモルガン・チェースが同行の全ての預金や実質的な資産を引き継ぐ契約を締結したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ファースト・リパブリック銀行は事実上の経営破綻となる。同行の資産規模は全米14位(2022年12月末時点)で、4月13日時点での総資産は約2,291億ドル、預金総額は1,039億ドルに上る。3月に経営破綻したシリコンバレー銀行(SVB、2023年3月13日記事参照)を上回り、米国での銀行の経営破綻としては過去2番目の規模となる。

同行はテクノロジー企業との取引が多く、預金保護の上限である1口座当たり25万ドルを超える口座割合が多いなど、SVBとの類似点が多いことなどから、SVB破綻以降、預金流出が続いていた。3月16日には、JPモルガン・チェースなど他行11行から合計300億ドルの保険対象外の預金預け入れ支援や(2023年3月17日記事参照)、連邦準備制度理事会(FRB)などからの多額借り入れなど、財務基盤の安定化による市場からの信用不安の解消に努めたが、2023年第1四半期(1~3月)の預金残高は2022年末比で約4割減となり(CNBC4月24日)、4月28日には同行の株価が上場来安値をつけるなど(ブルームバーグ4月28日)、極めて厳しい流動性不足と財務基盤の脆弱(ぜいじゃく)化に陥り、結果的に今回の経営破綻となった。

一方で、SVB破綻が突然の出来事だったことに比べ、同行の破綻不安は事前に米国の複数メディアでも報道されていたことに加え、SVBの買収先決定には約2週間かかったものの(2023年3月28日記事参照)、今回はJPモルガン・チェースが同行の買収先に既に決定しており、預金はFDICにより保護されるとともに、経営破綻発表当日の朝から同行全支店は通常どおり営業することが発表された。このことなどから、市場への影響は限定的で、5月1日の株式市場ではダウやスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)平均株価は前日比0.1%程度の小幅な下落にとどまった。なお、FDICによると、今回の預金保険基金からのコストは約130億ドルが見込まれる。

また、FDICは同日、SVBなどの破綻で預金全額保護という方針が打ち出されたことを踏まえ、現状の預金保護の上限額である1口座当たり25万ドルに関して、(1)引き続き限定的な口座金額保証とする(ただし、限度額は引き上げる可能性が高くする)、(2)限度額無制限の保証とする、(3)企業決済口座は限度額を高くするなど、口座タイプごとに限度額を変えるという3つの選択肢のうち、(3)を最有力候補として、今後預金保険による保護額の見直しに着手することを表明している。

ジョー・バイデン大統領は5月1日の記者会見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで「規制当局が同行の売却を進め、全ての預金者を保護し、納税者に負担がかからないよう、銀行システムの安全性と健全性を確保するための措置を講じた」と述べ、平静を呼びかけた。

(宮野慶太)

(米国)

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