米銀、第1四半期の貸し出し態度は小幅ながら厳格化、商業用不動産が懸念
(米国)
ニューヨーク発
2023年05月09日
米国連邦準備制度理事会(FRB)は5月8日、四半期に一度の銀行貸し出し態度指数(シニア・ローン・オフィサー・サーベイ)を公表した。それによると、米国の銀行が過去3カ月間〔2023年第1四半期(1~3月)に相当〕に中堅・大規模企業(年間売上高5,000万ドル以上)向け融資基準を前回調査期間よりも「厳しくした」と回答した割合は46.0%となり、前回調査から1.2ポイントの小幅な上昇となった。3月のシリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻(2023年3月13日記事参照)に端を発し、直近5月1日にはファースト・リパブリック銀行(FRC)が経営破綻(2023年5月2日記事参照)するなど、銀行への信用不安が生じる中、銀行も財務基盤の安定化を企図し、小幅ではあるものの貸し出し態度を厳格化させている現状が明らかになった。
本調査は、米国の銀行65行および外国銀行の米国内支店など19行の計84行を対象に、前期より融資基準を厳しくしたかどうかなどを質問したもので、四半期ごとに実施されている。今回の回答期間は3月27日~4月7日で、SVBなどの破綻の影響を受けてから初めての調査となる。
貸し出し態度指数について、前述のとおり中堅・大規模企業向けは1.2ポイントの上昇だが、小規模企業(年間売上高5,000万ドル未満)向け融資基準は46.7%と、前回調査から2.9ポイント上昇と、中堅・大企業よりもさらに厳格化された。分野別では、懸念されている商業不動産セクター(2023年4月24日記事参照)に対する割合は73.8%と、前回調査から4.6ポイント上昇した。FRBは、銀行が商業不動産セクターに対する融資基準を、中堅・大企業、小規模企業向けともに厳しくした結果、融資需要が減退したとしている。また、家計部門でも融資基準が厳しくなった結果、自動車ローンや消費者ローンの需要は弱まっているとしている。ただしクレジットカードローンの需要は横ばいだったとしている。
また、同日にFRBは半期金融安定報告書も公表しており、一連の銀行への信用不安について、米銀は高水準の流動性を維持しているとする一方で、今後、銀行が与信をさらに縮小させれば、企業や家計の資金調達コストが上がり、経済成長の鈍化につながる恐れがあるとした。特に、市場で懸念が高まる商業用不動産ローンの約60%を銀行が保有、さらにそのうち3分の2を資産規模500億~1,000億ドル以下の小規模銀行が保有しているとしたほか、今も続くリモートワークのトレンドが定着していけば、商業用不動産を中心に不動産価値が調整される可能性があるとしており、これらが小規模銀行にとってリスクとなり得る現状を指摘している。また報告書では、市場関係者ら専門家25人に今後1年程度の米国経済における重大リスクを聴取している。銀行の信用不安については、回答者の半数以上が重大リスクと認識しており、前回報告書では取り上げられなかったものの(2022年11月8日記事参照)、大きく上昇した。そのほか、高インフレや金融引き締めなども前回に引き続き重大リスクの筆頭に挙げられたが、政権与野党で懸案となっている債務上限問題(2023年5月2日記事参照)について、回答者の半数近くが重大リスクと答えた。これは、前回はリスクと認識されていなかった。
(宮野慶太)
(米国)
ビジネス短信 0dd72ff3e6bc5ea5