米ノンバンク規制強化、オープンエンド型ファンドや商業不動産が懸念

(米国)

ニューヨーク発

2023年04月24日

米国のシリコンバレー銀行(SVB)など破綻に端を発した銀行の信用不安はやや緩和しているとみられるものの、足元では銀行の貸出態度が厳格化する可能性が懸念される中(2023年3月2日記事参照)、影響を受ける可能性がある産業の1つが、商業不動産セクターだ。商業不動産は投資額が巨額であることから一般に借り入れなどへの資金依存が高くなりがちであることに加え、今回の信用不安で資金流動性不足が特に深刻な問題となっている中堅銀行からの貸出比率が約7割と高い(2023年4月13日記事参照)。米国モルガン・スタンレーによると、米国の商業用不動産関連の貸出債権の約1兆5,000億ドルが2025年末までに返済期限を迎えるとされており(ブルームバーグ4月8日)、プロジェクトが進行中の場合には、期限後に資金供給が滞った場合に同セクターの企業が相次いで経営破綻する可能性が懸念されている。

また、商業用不動産の場合、投資ファンドも多数出資しており、投資ファンドで近年増えているのが、投資家がいつでも解約し換金できるオープンエンド型ファンドだ。IMFによると、2022年第1四半期(1~3月)のオープンエンド型ファンドの世界全体での残高は約40兆ドルで、10年前と比べてほぼ倍増しており、さらに、このうち25兆ドル程度が米国で発行されたものだという。不動産系のオープンエンド型ファンドの場合、不動産という資産上、ファンド側は簡単に換金できないという性質がある一方、顧客から求めがあった場合は換金に応じなければならず、商業不動産セクターへの懸念を強めた投資家が換金に殺到した場合、ファンド側はSVBのように即座に流動性不足に陥る可能性がある。これは、ファンド総額の規模が大きいだけに新たな信用不安を招きかねない。金融当局は、中堅銀行だけでなく(2023年4月3日記事参照)、ノンバンクへの規制強化を提案しており(2023年4月24日記事参照)、その背景にはこうした事情もあるとみられる。

銀行の信用不安自体は緩和してきているとみられるものの、新たな火種も発生してきている状況であり、米国の金融セクターを取り巻く環境には引き続き注視が必要だ。

(宮野慶太)

(米国)

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