イエレン米財務長官、6月1日にも債務不履行の恐れとの見通し示す、バイデン大統領は議会指導者へ会合要請

(米国)

ニューヨーク発

2023年05月02日

米国のジャネット・イエレン財務長官は5月1日、懸案となっている債務上限問題(2023年4月27日記事参照)に関して、連邦議会のケビン・マッカーシー下院議長(共和党、カリフォルニア州)をはじめとする上下両院の共和・民主両党リーダー4人に書簡を送付PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。イエレン長官は書簡の中で、議会が債務の上限を引き上げるか上限の適用を停止しなければ、6月1日にも債務不履行に陥る恐れがあるとの見通しを示した。

米国では、連邦政府が借り入れられる債務の上限を議会が定めている。2023年1月に現状の上限額31兆4,000億ドルに達したため、財務省は公務員退職・障害者基金などの償還や新規投資の停止を通じて、必要資金を捻出してきた(2023年1月20日記事参照)。イエレン長官は当初、「6月上旬までに現金や臨時資金が枯渇する可能性は低い」と予想していたが(2023年1月16日記事参照)、税収の集まりが芳しくなく、市場では6月中にも債務不履行に陥る恐れがあるとささやかれていた(2023年4月21日記事参照)。今回、財務省が実際に最新の税収などを反映したところ、当初の想定より時期が早まったかたちだ。

ジョー・バイデン大統領はこの状況を受けて、5月9日に上下両院の両党リーダー4人をホワイトハウスに招待し、債務上限問題を話し合うための会合を行うと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。バイデン大統領は、この問題で対立しているマッカーシー議長と2月に会談している(2023年2月2日記事参照)。しかしそれ以降、会談は行われておらず、マッカーシー議長らが債務上限引き上げに関する歳出削減法案を下院で可決した際、バイデン大統領が同法案の成立可能性はないと明言するなど、対立は激化している(2023年4月27日記事参照)。バイデン大統領は「われわれにできる最も緊急的な対応は、経済・金融システムの継続的な信頼性を確保することだ。その点で最も重要なのは、米国国債のデフォルトという下院議長による脅しが交渉から外れていることを確認することだ」と述べ(ロイター5月1日)、同議長に譲歩を求めた。

折しも同じく5月1日にファースト・リパブリック銀行が経営破綻するなど、米国の金融セクターに対する信用不安は続いている(2023年5月2日記事参照)。金融市場への負荷は、深刻な景気後退への引き金になりかねず、債務上限問題について与野党間で折り合いをつけられるか、注目が集まる。

(宮野慶太)

(米国)

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