EU理事会、再エネ比率やエネルギー効率化の2030年目標で合意、さらなる引き上げも検討へ

(EU)

ブリュッセル発

2022年07月04日

EU理事会(閣僚理事会)は6月27日、欧州委員会が2021年7月に提案した2030年の温室効果ガス(GHG)削減目標(1990年比で少なくとも55%削減)を達成するための政策パッケージ「Fit for 55」(2021年7月15日記事参照)のうち、再生可能エネルギー(再エネ)指令改正案とエネルギー効率化指令改正案(2021年7月20日記事参照)について、EU理事会としての交渉上の立場に合意した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。「Fit for 55」のその他の主要提案に関しても、EU理事会は既にその立場をまとめている(2022年6月30日記事参照)。EU理事会は今回合意した立場に基づいて今後、欧州議会との審議に臨み、「Fit for 55」の各法案の最終的な合意形成を図る。

まず、再エネ指令改正案では、法的拘束力あるEU全体での最終エネルギー消費ベースのエネルギーミックスに占める再エネ比率の2030年目標について、現行指令上の「少なくとも32%」から、「少なくとも40%」に引き上げる欧州委提案の大枠で合意した。2020年のEU全体の再エネ比率は22.1%だったことから(2022年1月25日記事参照)、再エネ比率を2030年までに2倍弱に引き上げる必要がある。ただし、加盟国ごとのエネルギーミックスを決める権限は加盟国にあることから、大枠の目標達成に向けた分野別の目標に関しては、加盟国の裁量をより柔軟に認めるかたちでの合意となった。冷暖房と産業の各分野では、毎年一定の再エネ比率の増加率を設定する欧州委提案を修正し、5年ごとの平均で同増加率を設定した。また、産業分野で使用される水素におけるグリーン水素などバイオマス以外の再エネに由来するガス燃料の比率に関しては、欧州委提案の2030年までに50%とするものから、2030年までに35%、2035年までに50%とすることで合意した。交通分野の目標に関しては、各加盟国が欧州委提案のGHG削減を計測する制度(2030年までに少なくとも13%減)だけでなく、当該分野の最終エネルギー消費に占める再エネ比率を基準にする制度(2030年までに少なくとも29%)を選べるとした。また、当該分野のグリーン水素などの比率を努力目標値とすることで、欧州委提案の2030年までに2.6%の水準にすることで合意した。

エネルギー効率化指令改正案では、欧州委提案の2020年時点でのEUのベースライン予測値に対して2030年までに少なくとも9%改善する(最終エネルギー消費ベースでは36%の削減に相当)という大枠は維持されたものの、EU全体の一次エネルギー消費ベースでの削減目標や加盟国ごとの貢献目標に関しては、努力目標とするなどの妥協点もみられる。

ただし、EU理事会が今回合意した両法案の大枠の目標は、あくまで欧州委が2021年7月に提案した「Fit for 55」を前提にしたものだ。欧州委は5月、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、再エネへの移行をさらに加速させることで、ロシア産化石燃料依存からの早期脱却を目指す「リパワーEU」(2022年5月20日記事参照)の中で、こうした目標のさらなる引き上げ(再エネ比率目標は40%から45%へ、効率化目標は9%から13%へ)を提案している。EU理事会と欧州議会は今後あらためてこの提案を審議するとみられる。

(吉沼啓介)

(EU)

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