欧州議会、再エネ比率やエネルギー効率化の2030年目標で合意

(EU)

ブリュッセル発

2022年09月26日

欧州議会は914日、再生可能エネルギー(再エネ)指令改正案とエネルギー効率化指令改正案(2021年7月20日記事参照)に関して、欧州議会としての交渉上の立場に合意外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。両改正案は欧州委員会が、2030年の温室効果ガス(GHG)削減目標達成のための政策パッケージ「Fit for 55」(2021年7月15日記事参照)の一環として提案した。EU理事会(閣僚理事会)も6月に両改正案の立場に合意したが(2022年7月4日記事参照)、2030年の目標値などで欧州議会との相違点が目立つ。両機関は今後、合意形成に向けて協議を開始する。

欧州議会は、再エネ指令改正案に関して、法的拘束力のあるEU全体での最終エネルギー消費ベースのエネルギーミックスに占める再エネ比率の2030年目標を、現行指令上の「少なくとも32%」から、「少なくとも45%」に引き上げることで合意した。欧州委が「Fit for 55」で提案した「少なくとも40%」を上回り、欧州委が20225月に発表したロシア産化石燃料依存からの脱却計画「リパワーEU」(2022年5月20日記事参照)(注)で提案した目標値に沿ったものだ。欧州議会が今回採択したセクター別の目標値は、全体的に欧州委案よりも高い。

エネルギー効率化指令改正案に関しては、法的拘束力のあるEU全体での2030年目標を、欧州委が提案している2020年基準から2007年基準に戻した上で、2007年参考値比で最終エネルギー消費を「少なくとも40%」削減(上限量を740石油換算メガトンに設定)することで合意した。これは、欧州委が「Fit for 55」で提案した「少なくとも36%」削減(上限量を787石油換算メガトンに設定)のみならず、「リパワーEU」で提案した上限量(750石油換算メガトン)と比べても、厳格な目標値となった。また、加盟国別の目標値にも法的拘束力を持たせるとした。

欧州議会の立場は、「リパワーEU」での欧州委案を織り込む。一方で、EU理事会は「Fit for 55」を前提としており、「リパワーEU」での欧州委案は今後検討するとみられる。

グリーン水素の委任指令案の後退は必須

欧州議会は再エネ指令改正案において、グリーン水素の定義は、欧州委の委任法案(2022年5月27日記事参照)より緩和した基準にすべきとした。中道右派の欧州人民党(EPP)グループが、再エネ指令における委任法案の根拠規定に関して出した修正提案を、欧州議会は僅差で採択した。修正提案は、グリーン水素が再エネ電力により生産されていることを認定する要件として、委任法案が規定する水素の生産と利用する再エネ電力の生産との間の、地理的および時間的な相関性の基準を大幅に緩和するものだった。厳格すぎる基準は、グリーン水素の普及の妨げになるとの懸念があるとみられる。欧州議会が委任法案の根拠規定自体を修正する提案を採択したことから、欧州委は現行の委任法案を維持することは難しく、新たな委任法案の策定を迫られるとみられる。

(注)詳細は、2022年9月1日付地域・分析レポート参照

(吉沼啓介)

(EU)

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