EUの2021年再エネ比率は21.8%、前年比0.3ポイント減

(EU)

ブリュッセル発

2023年01月27日

欧州統計局(ユーロスタット)は1月19日、2021年のEU全体と各加盟国の最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギー比率を公表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EU全体では21.8%となり、2020年の22.0%から四捨五入値で0.3ポイント低下した(添付資料表参照)。低下するのは統計開始以来初めてだ。

現行の再エネ指令は2030年の再エネ比率目標を32%としているが、2030年の温室効果ガス削減目標(1990年比で55%削減)の実現に向けた政策パッケージ「Fit for 55」(注)の一環として提案された、現在審議中の再エネ指令改正案(2021年7月20日記事参照)では、2030年の再エネ比率目標を40%としている。また、ロシア産化石燃料依存脱却計画「リパワーEU」(2022年9月1日付地域・分析レポート参照)の一環として提案された改正案(2022年5月20日記事参照)は、45%に引き上げることを提案している。こうしたことから、欧州統計局は、加盟国は再エネの拡大を一層強化する必要があるとしている。今回の2021年の実績や、2022年の「リパワーEU」に伴う、一部加盟国による一時的な石炭回帰や原子力発電所の稼働延長などを踏まえると、加盟国は今後、新たな2030年目標の達成に向けて、再エネ比率の大幅かつ急激な拡大を迫られそうだ。

国別では、2020年と同様にスウェーデンが62.6%と再エネ比率が最も高く、フィンランドが43.1%、ラトビアが42.1%と続いた。また、2020年の比率からの増加幅は、エストニアが7.5ポイントと最大で、デンマークが3.0ポイント、スウェーデンが2.5ポイントと続いた。一方で、ルーマニア、フランス、アイルランド、オランダの比率は、2030年目標の達成に向けて、2021年以降の最低限の目標として達成が義務付けられているベースライン(2020年目標)すら下回る結果となった。特にフランスは、2021年の再エネ比率自体は2020年から微増の19.3%となったが、ベースラインを3.7ポイント下回った。

欧州統計局は、2021年の再エネ比率が減少した原因について、2021年の再エネ生産量自体は2020年を上回ったものの、新型コロナ関連規制の解除によりエネルギー消費が増加したことや、再エネ比率の計算方法に変更があったことなどを挙げている。

(注)調査レポート「『欧州グリーン・ディール』の最新動向」を参照。

(吉沼啓介)

(EU)

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