米銀2022年第4四半期利益は3四半期ぶりの減少、貸し出し態度の厳格化進む

(米国)

ニューヨーク発

2023年03月02日

米国連邦預金保険公社(FDIC)が2月28日に公表した四半期報告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2022年第4四半期(10~12月)の米国銀行などの純利益合計は前比33億ドル減(4.6%減)の684億ドルと、3四半期ぶりに減少となった。調査は四半期ごとに行われ、今回は米国の4,706の商業銀行と貯蓄金融機関を対象に調査が行われた。

高インフレ抑制のための連邦準備制度理事会(FRB)による急激な金融引き締めにより、2022年以降、これまでの政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利上げ幅は4.5ポイントに達している(2023年2月2日記事参照)。このFF金利上昇の恩恵を受けて純利息収入が増加する一方で、景況感悪化から貸倒引当金が前期と比べて約1.7倍多く積み増されるなど、マイナス分がプラス分を上回り、全体では利益が押し下げられる結果となった。2022年通年でも、純利益は前年比161億ドル減(5.8%減)の2,630億ドルと、2020年以来の減少となった。

FDICは今回の結果について「貸付金は引き続き増加し、純利息収入は増加し、資産の質は良好な状態を維持している。銀行業界は依然として十分な資本と高い流動性を維持している」としつつも、「銀行業界は引き続き、インフレ、市場金利の上昇、地政学的な不確実性による大きな下振れリスクに直面しており、これらは銀行の収益性を損ない、信用の質と資本を弱め、融資と預金の伸びを制限する可能性がある」と述べている。

銀行の収益悪化は直近の貸し出し態度にも表れており、FRBが公表する、銀行の融資審査基準が厳格化した割合を表す貸し出し態度指数は、2023年第1四半期(1~3月)に大企業・中堅企業向けで44.8、中小企業向けで43.8と、新型コロナ禍を除けば、どちらも2009年第1四半期(それぞれ64.2、69.2)以来の高水準にまで達している。また、個人向けクレジットカード審査基準が厳格化した割合を表す同指数も2023年第1四半期に28.3と、こちらも新型コロナ禍を除けば、2009年第3四半期(7~9月、35.3)以来の高水準にまで達している。貸し出し態度の悪化は、企業の資金繰りに大きく影響することはもちろん、消費者にも影響を与え得る。

2022年第4四半期の家計債務をみると、クレジットカードローンの利用は9,860億ドル(610億ドル増)と、新型コロナ禍以前の最高値(9,270億ドル)を上回っており(2023年2月28日記事参照)、消費活動の大きな源泉となっている。しかし、クレジットカードと自動車ローンの延滞率は徐々に上昇している。これは特に若年層の借り手で顕著とされているほか、若年層で学生ローン債務の返済が2023年後半から再開されることにより(2022年11月24日記事参照)、さらに延滞率は上昇する可能性があるとされている。金融引き締めと景況感の悪化は今しばらく続く見込みで、こうした環境に企業や消費者がどこまで耐えられるか引き続き注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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