米金融当局、ノンバンクの規制強化案を発表

(米国)

ニューヨーク発

2023年04月24日

米国のジャネット・イエレン財務長官が議長を務める金融安定監視評議会(FSOC)は4月21日に会議を開き、ノンバンクへの規制強化案を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。シリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻(2023年3月13日記事参照)など、銀行セクターの信用不安を受けた規制強化の動きとなる。

ノンバンクとは、保険会社や年金基金、ヘッジファンドおよびミューチュアルファンドなどの投資会社、暗号資産取引会社など、銀行以外の金融機関を指す。ノンバンクは一般に、銀行と比べて監督・規制が緩いことが指摘されている。米国では、リーマン・ショック後に成立したドッド・フランク法(金融規制改革法)などにおいて、ノンバンクにも規制が課されていたが、トランプ前政権下の2019年に規制が一部緩和されていた。今回は緩和された規制を再度強化することを意図している。

具体的には、2019年の緩和によって個別のノンバンクを新たに規制対象に加えるには6年かかるとされていたプロセスを「間違った認識に基づくものもある」として見直し、システミック・リスク懸念など当局が判断すれば、経営情報を求めるようにするなど、規制対象に加えやすくする。

なお、SVBなどの破綻に端を発した信用不安への対応として、当局は金融機関を対象に短期融資を行う「バンク・ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)」(2023年3月14日記事参照)を新設している。BTFPの4月19日時点の借入残高は740億ドルと、前週(4月12日)時点の718億ドルを上回っており、金融機関の流動性不足は、ピーク時から緩和されるも、中小金融機関を中心に現在も続いているとみられる。連動して、銀行からの預金流出も続いており、4月12日時点の米国銀行の預金残高は約17兆1,800億ドルで、SVB破綻前の3月8日時点から約4,200億ドル減少している。逆に、銀行以外への資金移動が進んでいるとみられ、米国投資信託協会(ICI)によると、マネー・マーケット・ファンド(MMF)への資金流入は、足元では減少に転じているものの、3月8日から4月19日にかけては3,150億ドル増加している。

こうした資金流出入の背景には、銀行への財務健全性への懸念があるとみられる。米銀が保有する債権含み損は、2022年末で6,204億ドル、このうち今回SVB破綻において問題となった満期保有目的の含み損に限っても3,409億ドルに達する。満期保有目的債券の場合、現状の含み損をバランスシートに計上する必要はないが、SVBの場合、流動性不足からこうした債権の売却に迫られ、結果的に自己資本毀損に至った。これら含み損は、金利が低下すれば改善に向かうが、金融当局がインフレ抑制を優先している現在、金利低下は期待できず、自己資本の回復を企図する銀行が貸出抑制に走る可能性が懸念されている状況だ。

(宮野慶太)

(米国)

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