米ホワイトハウス、SVBなどの破綻受け中堅銀行への規制強化案発表、中堅銀行の流動性不足は緩和傾向

(米国)

ニューヨーク発

2023年04月03日

米国ホワイトハウスは3月30日、シリコンバレー銀行(SVB)などの破綻を受け、中堅銀行への規制強化案を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

米国では、リーマン・ショック後にその教訓を踏まえ、金融機関への自己資本や流動性の確保などを課すドッド・フランク法(金融規制改革法)が成立したが、トランプ政権時の2018年に、資産規模2,500億ドル以下の金融機関に対して、こうした厳しい措置を一部緩和した。今回経営破綻したシリコンバレー銀行(2023年3月13日記事参照)やシグネチャー銀行(2023年3月14日記事参照)はいずれも総資産2,500億ドルに満たず、連邦準備制度理事会(FRB)が金融機関の財務健全性などを審査する2022年のストレステストの公表対象からは外れていた。

規則案では、こうしたトランプ前政権での改正の修正を中心に行うよう金融当局に求めた。具体的には、資産規模1,000億~2,500億ドルの金融機関を対象として、資本金や流動性要件の引き上げ、ストレステストの実施強化、経営破綻時の事業整理計画の事前作成などを求めた。また、今回破綻した2行の破綻処理のため、預金保険基金には現時点で合わせて225億ドルのコストが発生する見込みで、これらの補填(ほてん)のため同基金に対する銀行からの保険料引き上げが必要となる。だが、今回の規則案では、経営体力の少ない地方銀行にはこれを求めないとした。ホワイトハウスによると、これらの改正は全て議会承認なしに実行可能だという。

今回の規則案が施行されるかは、金融機関を監督するFRBなど規制当局の判断となる。FRBで金融規制を担当するマイケル・バー副議長は議会証言で、今回の一連の銀行破綻について「これまでの銀行規制に不備があった」と述べるなど、規制見直しは不可欠という認識を示している(ロイター3月29日)。FRBによる規制見直し案は5月1日までに公表予定だ(2023年3月14日記事参照)。

3月9日から15日にかけて、資産残高26位以下の中堅銀行の預金残高は前週比1,200億ドル減少と、過去最大の減少幅を記録したが(2023年3月28日記事参照)、3月16日から22日にかけての同預金残高は前週比約60億ドル増、逆に、借り入れは約240億ドル減と、中堅銀行からの預金流出や流動性不足は一服した感がある。今後の見通しは未知数だが、SVBなども破綻前から銀行の貸し出し態度は既に悪化しており(2023年3月2日記事参照)、中堅銀行を中心にこれがさらに悪化すれば、特に資産残高26位以下の中堅銀行の融資残高に占める比率が約70%と高くなっている商業不動産への影響が懸念されている。規制見直しは不可避なものの、銀行の負担は増加するため、こうした実体経済への影響も勘案される可能性がありそうだ。

(宮野慶太)

(米国)

ビジネス短信 cd3fe3640b48ff7f