2022年のGDP成長率は3.1%、アジアからの生産移管効果もあり製造業が牽引

(メキシコ)

メキシコ発

2023年02月27日

メキシコの国立統計地理情報院(INEGI)は2月24日、2022年第4四半期の産業分野別実質GDP成長率PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。GDP全体では前年同期比3.6%、季節調整済み前期比0.5%となり、2023年1月末に発表の速報値(2023年2月2日記事参照)から前年同期比は変化なし、前期比は0.1ポイント上方修正された。前年同期比成長率を産業別にみると(添付資料表1参照)、農牧林・水産業は6.3%、鉱工業は3.2%、サービス業は3.5%と全てプラス、季節調整済み前期比(添付資料表2参照)でみても、それぞれ1.99%、0.50%、0.12%と成長が持続したが、鉱工業とサービス業は第3四半期と比べると減速感がみられる。通年の成長率は3.1%で、農牧林・水産業が2.8%、鉱工業が3.3%、サービス業が2.8%となった。

鉱工業の内訳をみると、第4四半期は製造業が前年同期比4.2%増と堅調、GDP全体を0.68ポイント押し上げた。ただし、第3四半期と比べると一服感がある。製造業の通年の成長率は5.2%増と好調、GDP成長率への寄与度は0.85ポイントに達した。製造業のうち、輸送機器製造業は前年同期比12.5%増となり、2四半期連続の2桁成長を記録、通年でも9.4%増と高い成長になった。他方、鉱業は前年同期比0.3%増、建設業は同2.6%増とプラスに転じたものの、通年の成長率はそれぞれ0.2%増、0.4%増と振るわなかった。

サービス業では、第4四半期の卸売業が前年同期比4.4%増、小売業が同1.5%増とプラスを維持したが、前期比ではとそれぞれ1.27%減、1.53%減と第3四半期に比べ減速した。運輸・倉庫業は、製造業の活性化に伴い前年同期比7.0%増と好調、通年では11.4%増と2桁成長を記録し、GDPを0.70ポイント押し上げた。ホテル・レストラン業も第4四半期は前年同期比9.6%増と2桁に達しなかったが、通年では26.3%増の成長で、GDPを0.47ポイント押し上げた。労働法改正による人材派遣の原則禁止(2021年4月27日記事2021年8月2日記事参照)により、2021年第3四半期以降不振を続けているビジネス支援サービスは、2022年第4四半期が前年同期比19.3%減、前期比9.19%減と依然として低迷している。ビジネス支援サービスがGDPに占める構成比は2019年時点で3.8%に及んでいたが、2022年には3分の1以下の1.1%まで縮小している。

幅広い分野で中国からの生産移管の影響

2022年メキシコのGDP成長率を牽引したのは製造業で、生産好調な分野では、対米輸出を視野にいれた、生産拠点を消費地の近隣国に移転するニアショアリングの観点から、中国などからメキシコへの生産移転の影響(2022年10月31日付地域・分析レポート参照)が見られる。米国国際貿易委員会(USITC)のデータから、2018年と2022年の米国の輸入に占める中国製とメキシコ製のシェアをみると、様々な品目で中国製の輸入が減り、メキシコ製の輸入が増えている。コンピュータ・同ユニットでは、中国製が2018年の56.2%から2022年の43.9%へ縮小する一方、メキシコ製のシェアは28.1%から30.5%へ拡大している。同様に自動車部品でみると、メキシコ製が36.4%から37.7%へ拡大する一方、中国製のシェアが16.5%から12.9%へ縮小している。テレビ・モニターの輸入でみると、中国製が51.7%から37.2%に縮小する一方、メキシコ製は37.4%から47.2%へと10ポイント近く上昇している(添付資料表3参照)。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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