米税関、マレーシア企業の使い捨て用手袋の輸入差し止め撤回、強制労働への対処評価

(米国、マレーシア)

ニューヨーク発

2023年02月10日

米国税関・国境警備局(CBP)は2月8日、マレーシアのYTYグループが生産した使い捨て用手袋の輸入を差し止める違反商品保留命令(WRO)を撤回したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。これにより、同社の使い捨て用手袋は同日以降、米国への輸入が再び認められるようになった。

CBPは、強制労働を使用して生産された製品の輸入を禁じる1930年関税法307条に基づき、WROを発令する権限を持つ(注)。CBPは2022年1月、YTYグループの生産施設と従業員の住居施設で、ILOの強制労働指標を示す行為などがあったとして、同社が生産した使い捨て用手袋に対するWROを発表していた(2022年2月4日記事参照)。CBPの発表によると、WROの発令以降、YTYグループは強制労働指標に対処する行動計画の策定・実施や、移民労働者が支払った人材派遣費用の払い戻し、法令順守に関する独立監査の委託などに取り組んだ。これらの是正措置の結果、CBPは同社がWROで指摘された強制労働指標に対処したと判断し、WROの撤回を決定した。

CBPが関税法307条に基づくWROや強制労働の認定を撤回するのは2023年に入って2件目で、いずれもマレーシア企業を対象としている。CBPは2月3日、強制労働への対処を理由に、マレーシアのサイム・ダービー・プランテーションとその子会社・合弁会社が製造したパーム油などに対する輸入禁止措置を解除した(2023年2月6日記事参照)。CBPのアンマリー・ハイスミス局長補は発表で「われわれは、輸入者や企業が米国でビジネスを行うために、サプライチェーンの強制労働を特定し、排除する世界的な動きを目の当たりにしている」と指摘した。

CBPは2021年以降、YTYグループを含むマレーシア企業の使い捨て用手袋に対するWROを4件発表している。今も有効な3件のWROはスーパーマックス(2021年10月22日記事参照)、スマート・グローブ(2021年11月9日記事参照)、ブライトウェイ(2021年12月21日記事参照)をそれぞれ対象としている。

(注)米国の人権関連法・規制や、サプライチェーンに関わる規制の運用、実務上の対応などについては、2021年6月25日付地域・分析レポート調査レポート「グローバル・バリューチェーン上の人権侵害に関連する米国規制と人権デューディリジェンスによる実務的対応」を参照。

(甲斐野裕之)

(米国、マレーシア)

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