米税関、マレーシア企業のパーム油の輸入許可、強制労働への対処確認

(米国、マレーシア)

ニューヨーク発

2023年02月06日

米国税関・国境警備局(CBP)は2月3日、マレーシアのサイム・ダービー・プランテーション(Sime Darby Plantation)とその子会社・合弁会社が製造したパーム油などを、強制労働を理由に輸入禁止していた措置を解除すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、同日付の官報でも公示外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。これにより、同社のパーム油などは同日以降、米国への輸出が再び認められるようになった。

CBPは2020年12月、強制労働の疑いにより、サイム・ダービー・プランテーションが製造したパーム油とそれを含む製品の輸入を差し止める違反商品保留命令(WRO)を発表した(注)。その後2022年1月には、同社が強制労働によってパーム油などを製造していると正式に認定した。これにより、米国に輸入された同社のパーム油などはCBPによる差し押さえ対象となっていた(2022年3月10日記事参照)。

CBPは輸入を再び許可した理由について、サイム・ダービー・プランテーションがパーム油などの製造で強制労働を使用していないとの十分な証拠を得たためと説明している。CBPのトロイ・ミラー局長代行はニュースリリースで、CBPによる強制労働是正の取り組みは「米国のビジネスを不公正な経済貿易慣行から守る一方で、米国に向けられた物品が倫理的に調達されたものであることを確実にする」と強調した。

マレーシア産パーム油を巡っては、2020年9月に発令したFGVホールディングスに対するWROは今も有効となっている。CBPはパーム油以外にも、同国産の使い捨て用手袋に対するWROを2021年以降で4件発表している(2022年2月4日記事参照)。一方で、2021年9月には、同国の使い捨て用手袋メーカーのトップ、グローブに対するWROについて、労働環境の改善を理由に解除している(2021年9月17日記事参照)。今回の件も含めて、WROが1度発動されても、適正な対処をすれば解除が可能なことが示されている。

(注)CBPは、強制労働を使用して生産された製品の輸入を禁じる1930年関税法307条に基づき、WROを発令する権限を持つ。米国の人権関連法・規制や、サプライチェーンに関わる規制の運用、実務上の対応などについては、2021年6月25日付地域・分析レポート調査レポート「グローバル・バリューチェーン上の人権侵害に関連する米国規制と人権デューディリジェンスによる実務的対応」を参照。

(甲斐野裕之)

(米国、マレーシア)

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