国務院台湾弁、台湾産食品・農水産品の輸入問題解決へ向けた姿勢を相次ぎ示す

(中国、台湾)

北京発

2023年02月15日

中国国務院台湾事務弁公室(国台弁)は1月29日、台湾の一部食品企業の登録情報が不完全とされて中国向けの食品輸出ができなくなっている問題について、非常に重視し積極的に対応しているとしたほか、金門酒厰など、要求を満たした企業63社については、登録あるいは登録情報を更新したと明らかにした(注1)。その後、国台弁は2月8日に上記の63社以外についても、提出された登録資料を主管部門が規定に基づき現在審査しているところだと公表した。

国台弁は、2022年から一部の台湾食品企業が関連規定に基づいて登録情報を完備することができず、これらの企業による中国向け輸出に影響を与えていた(2022年8月9日記事参照、注2)が、最近、金門酒厰を含む台湾内の一部企業が中国の主管部門に関連登録資料を提出・補充し、また、中国国民党の洪秀柱前主席ら台湾内の関係者や商工団体が同弁公室に対して中国への輸出再開に関する要望を行ったことなどを紹介した(注3、注4)。

さらに、国台弁は2月13日、2021年3月以来、台湾産農水産品から有害生物や禁止薬物が検出されたとして、関連する品目の輸入を一時停止している問題(注5)についても、台湾内の農民や漁民が国民党などを通じて中国の早期輸入再開を希望しているとして、輸出再開に向け支援する用意があると表明した。

台湾側に「小三通」の完全再開や両岸間の直行便回復を促す

このほか、国台弁は、両岸間の往来の再開に向けても意欲を示した。一部再開されている「小三通」(注6)について、完全再開を台湾側に求めたほか、台湾人や台湾内の関係団体の要望を踏まえて、中国の航空主管部門が2月1日、両岸間の直行便就航都市の中で希望が特に多い16都市(注7)について、優先的に運航を再開するよう台湾側に要請したと説明した(注8)。

(注1)中国海関総署の輸入食品外国生産者のデータベース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから最新の登録状況を確認できる。製品カテゴリーごとの登録となっているため、同一の企業が複数の登録を行っていることもある。

(注2)なお、同問題が明らかになった2022年8月には、ほかにも天然砂の台湾向け輸出の一時停止や台湾産かんきつ類、タチウオ、冷凍アジの輸入通関受理の一時停止といった措置が相次いで実施された(2022年8月4日記事参照2022年8月4日記事参照)。

(注3)中国メディアの報道によると、2022年12月に金門酒厰の申請書類や生産許可証の文言などが要求を満たしていないとして中国が同社からの輸入を一時停止したが、国台弁などが海関総署に協力したことによって、1月28日には同社のコーリャン酒の中国への輸出が再開されたとしている(「環球時報」1月30日)。

(注4)国民党の洪秀柱前主席は1月28日に福建省アモイ市で、2月9日には同党の夏立言副主席が北京市でそれぞれ国台弁の宋涛主任と会談した。

(注5)中国による台湾産品に対する輸入停止措置としては、2021年3月1日から台湾産パイナップルの輸入を有害生物の検出を理由に一時停止(2021年3月3日記事参照)したほか、同年9月20日から台湾産果物のバンレイシ(釈迦頭)とレンブ(蓮霧)、2022年6月13日から台湾産高級魚のハタの輸入を一時停止した。その後も、2022年8月3日から台湾産かんきつ類、タチウオ、冷凍アジの輸入を一時停止するなどの措置を取っている。

(注6)福建省沿海部と台湾側の離島(金門県と馬祖県)との間に限定して、三通(通信・通航・通商)を認めるもの。2020年の新型コロナウイルス感染拡大以降は停止されていたが、2023年1月7日から部分的に再開されていた。

(注7)16都市は、広東省広州市・深セン市、江蘇省南京市・無錫市、浙江省杭州市・寧波市、湖北省武漢市、福建省福州市、安徽省合肥市、重慶市、湖南省長沙市、河南省鄭州市、海南省海口市、陝西省西安市、遼寧省瀋陽市、黒龍江省ハルビン市を指す。

(注8)国台弁は、「民進党当局」が「小三通」の対象から金門、馬祖以外の台湾人を除外しているとして、早期の全面再開を求めた。また、両岸間の直行便再開についても、中国側は既に準備を完了しており、何の障害もないとして、台湾側に対して新型コロナウイルス感染拡大を口実に直行便再開を妨げないよう求めた。

(小宮昇平)

(中国、台湾)

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