中国税関のデータベース上で多数の台湾の食品関連企業が「輸入一時停止」状態

(中国、台湾)

北京発

2022年08月09日

中国海関総署が運営する輸入食品企業データベース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、多数の台湾の食品関連企業が「輸入一時停止」の状態となっている。同データベース上には84日時点で台湾の食品関連企業による輸入食品の情報3,228項目が登録されているが、そのうち2,100項目が「輸入一時停止」の状態となっている(注1)。

同データベース上には1類から32類(注2)まで多種類の食品の情報が登録されている。そのうち「輸入一時停止」状態となっている企業が最も多いのは「水産品」(登録されている890項目のうち776項目)となっており、その他には「保健食品」(170項目のうち149項目)、「その他(栄養補助食品、スポーツ栄養食品)」(116項目のうち98項目)といった分類で「輸入一時停止」となっているものが多くみられる。

台湾メディアの情報を基にした中国側の報道では、今回の措置は海関総署が81日時点で関連規定に違反している台湾の一部サプライヤーからの輸入を緊急停止したもので、「輸入食品境外生産企業登録管理規定PDFファイル(699KB)」(税関総署令第248号、注3)に基づき、登録情報が更新されていない台湾企業に対して中国向け輸出を制限したとしている(「観察者網」85日)。

上記の措置以外に、8月以降、中国は天然砂の台湾向け輸出の一時停止や台湾産かんきつ類、タチウオ、冷凍アジの輸入通関受理の一時停止といった措置を相次いで実施している(2022年8月4日記事8月4日記事参照)。

中国側の一連の措置の影響について、アモイ大学(福建省)台湾研究センターの唐永紅副主任は、中国の行動は両岸の経済貿易活動で生じた健康や品質、証明書類などの問題を「通常どおり処理しているものであって、『経済制裁』ではない。もし本当に制裁をするのであれば、台湾からの輸入をより大規模に削減・停止するだろう。現在実施している措置が台湾の経済貿易に与える影響は非常に限定的」と指摘している(注4)。

他方、唐副主任は、台湾側でECFA(注5)終了などの中国の追加措置を懸念する声が出ているとされることに対して、「ECFAは『92年コンセンサス』の基礎の上に締結されたものであり、もし民進党当局が『92年コンセンサス』を否定し、『台湾独立』のための分離工作を大々的に行うならば、台湾への譲歩を具現化したECFAのアーリーハーベストリストも運用を継続する積極的な意義を失うだろう」とコメントした(同上)。

(注1)報道によると、今回輸入が一時停止されたのは100社余りの企業の計2,066項目の食品に及び、上記データベースに登録されている台湾企業の64%を占めるという(「観察者網」85日)。

(注2HSコードとは異なる。

(注3)同規定は特定品目に該当する食品を輸出する国外製造、加工、貯蔵企業に対して中国税関への登録を求めるもので、202211日から施行されている(2021年5月24日記事参照)。

(注4)台湾財政部が発表している貿易統計によると、台湾にとって中国は輸出の28.2%、輸入の21.6%を占めている(2022年1月13日記事参照)。他方、2020年の台湾の食料品(HS分類における第14部)の対世界輸出額は輸出総額の1.5%にとどまっている〔世界貿易投資報告(台湾)2020年版参照PDFファイル(1.7MB)〕。

(注5)中国と台湾の間で20106月に締結された「海峡両岸経済協力枠組み協定」。中国と台湾の間の物品・サービス貿易の一部開放などを規定しており、アーリーハーベスト品目について関税減免が実施されている(詳細は2020年1月27付地域・分析レポート2020年3月17付地域・分析レポート参照)。

(小宮昇平)

(中国、台湾)

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