欧州産業界、2023年のEUのFTA締結加速を要請

(EU)

ブリュッセル発

2023年01月13日

欧州産業連盟(ビジネスヨーロッパ)は1月11日、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長と欧州理事会のシャルル・ミシェル常任議長に宛てた公開書簡で、進行中のEUの貿易協定(以下、FTA)締結プロセスや交渉の加速化を求めた(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

書簡では、エネルギー高騰やインフレ、サプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)性といったEU企業の課題に対処するキーワードとして「多角化」を挙げ、FTA網の拡大を通じて輸出と輸入両面で貿易相手の多角化を進める必要性があると強調した。米国、中国、英国といったEUの主要な貿易相手国との間で不確実性が高まりつつあり、ウクライナ情勢の見通しも立たない中、輸出では新たな市場の開拓、輸入では重要な原材料の調達確保が不可欠だとした。そこで、2023年はEUとメキシコ、チリ、ニュージーランドとのFTAが「日の目を見る」年に、また、メルコスールとのFTAも最終合意に向けて前進する年にしなければならない、とEU首脳に訴えた。

FTA発効までのプロセス長期化を懸念

欧州委は2022年6月にEUとニュージーランドFTAの交渉妥結を発表(2022年7月4日記事参照)、同年12月にはEUとチリとのFTA現代化交渉を経て高度枠組み協定の交渉妥結を発表している。EUとメキシコも2020年4月に現代化交渉が妥結している(2020年4月30日記事参照)。EUメルコスールFTAは2019年6月に大筋合意に達したものの、政治的な要素がからんで停滞している(2022年11月10日記事参照)。いずれの協定も正式な署名と批准手続きを経た発効には至っていない。今回の書簡はEUのFTA発効までのプロセス長期化を懸念するEU産業界の声と言える。

EUのFTA交渉では、書簡では言及しなかったものの、オーストラリアとの交渉が、直近の2022年10月の交渉会合が第13回を数えて大詰めを迎えており、2023年中の合意も視野内に入っている。その他、インドとは2022年6月にFTA交渉を開始(2022年4月27日記事参照)、同年中に3回の交渉会合を開催したほか、ASEAN諸国とのFTAも2022年12月に開催された初のEU・ASEANサミットを契機に加速が期待されている(2022年12月16日記事参照)。

(安田啓)

(EU)

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