初のEU・ASEANサミット、ブリュッセルで開催

(EU、ASEAN、タイ、マレーシア)

ブリュッセル発

2022年12月16日

EUとASEANの首脳会議(サミット)が12月14日、ブリュッセルで開催された(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。両ブロック間のサミット開催は初となった。採択された共同声明には、経済協力と貿易、コネクティビティーとデジタル化の推進、持続可能な開発と気候変動、新型コロナウイルスへの対応などについて、双方の戦略的パートナーシップの重要性などが盛り込まれた。

貿易については、WTOを中心としたルールベースの多国間貿易体制への支持を確認し、サプライチェーンの強靭(きょうじん)化といった共通の課題に取り組むとした。両ブロック間の自由貿易協定(FTA)については「将来のEU・ASEAN間FTAが共通の長期的な目標であることを再確認する」との表現にとどまった。EUとASEANは10月に世界初となるブロック間の航空協定に署名するなど、経済面での関係強化を進めている(2022年10月18日記事参照)。

タイ、マレーシアとパートナーシップ・協力協定を締結

同サミットの機会を捉えて、EUは同じく14日、タイ(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、マレーシア(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)とそれぞれパートナーシップ・協力協定(PCA)に署名した。環境、エネルギー、気候変動、運輸、貿易投資、労働、人権など幅広い分野にわたって協力関係を確認する内容となっている。貿易投資に関する章では、税関協力、衛生植物検疫措置(SPS)、貿易の技術的障害(TBT)、知的財産権などについて基礎的な事項を確認する内容にとどまっている。ただし、マレーシアとのPCAの貿易投資章では、EUとマレーシア間のFTA締結に向けて努力するとの表現が盛り込まれたのに対し、タイとのPCAにはこのような規定が含まれていない(注)。他方、タイとのPCAの貿易投資章には、マレーシアには含まれていない持続可能な食料システムや、アンチダンピング、デジタル貿易について独立した条項を規定するなど、それぞれ特色のある内容となった。PCAはEU加盟国とタイ、マレーシアがそれぞれの協定を批准した上で発効するが、タイとのPCAのみ双方の合意に基づいて加盟国の批准を待たずして暫定的な適用が可能と規定されている。欧州理事会のシャルル・ミシェル常任議長は「EUとベトナム、シンガポールとの貿易協定が好例であるように、貿易は両地域の成長と関係強化の強力なエンジンになる」と述べ、ASEAN加盟国とのFTA締結を加速させる意欲を示した。

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)はサミットを前に14日に声明を発表し、ASEAN各国とのFTA交渉について、比較的先行しているインドネシアとの交渉で一層踏み込んだ取り組みが必要と述べるとともに、実質的に中断しているタイ、マレーシア、フィリピンについても交渉の再開を強く求めた。

(注)EUとASEAN加盟国とのFTA交渉状況については、ジェトロ「世界のFTAデータベース」を参照。

(安田啓)

(EU、ASEAN、タイ、マレーシア)

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