EU・インド首脳、貿易技術評議会の設立に合意、FTA交渉は6月再開

(EU、インド)

ブリュッセル発

2022年04月27日

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は4月25日、EUとインドとの外交関係樹立60周年の機会を捉えてインドを訪問し、ニューデリーでナレンドラ・モディ首相と会談した。会談では両者の経済関係の強化が主要議題となり、新たに「EUインド貿易技術評議会(Trade and Technology Council:TTC)」の設立と、EUインド間の自由貿易協定(FTA)交渉の6月再開などに合意した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

TTCは貿易、経済、技術分野における共通の課題に取り組み、協力関係を強化するための政治主導のハイレベル対話の枠組み。同様の枠組みはEU・米国間で立ち上げられており、2021年9月に第1回会合が開催された(2021年10月1日記事参照)。今回、EUにとって2つ目のとなるTTC立ち上げを発表したEU・インドの共同声明では、「地政学上の急速な環境変化により、相互に戦略的なエンゲージメント(関与)を深化させる必要性が浮き彫りになった」点で一致したとした。技術協力やパートナーシップの強化はEUが2021年9月に発表した「インド太平洋地域戦略」(2021年9月17日記事参照)で示されていたが、現在のロシア・ウクライナ情勢に起因する安全保障環境の変化が今回の合意を後押ししたことがうかがわれる。

EUインド間のFTA交渉は2007年に開始したものの、2013年以降は事実上停止している。交渉再開自体は2021年5月のEU・インド首脳会議で合意されていたが、今回、6月の交渉会合実施という具体的な日程が示された。また、並行して投資保護協定や地理的表示に関する協定についても、同じタイミングで交渉を開始することが発表された。

委員長はロシアへの非難とともに中国を牽制

フォン・デア・ライエン委員長は同じ25日、インド政府がシンクタンクと共催する国際会議「ライシナ対話」で基調講演を行い、今回のインド訪問の成果を説明したほか、ロシアのウクライナ侵攻がインド太平洋地域の脅威となっていると批判するメッセージを示した(基調講演全文外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同委員長は、2月にロシアと中国が「限界のない友情と禁止分野のない協力関係」に合意した共同声明の後にロシアのウクライナ侵攻が実行されたと指摘し、両国の共同声明が言及した「新しい国際関係」に疑問を呈した。その上で、平和的で繁栄したインド太平洋地域の実現に向け、中国に対しては、4月1日のEU・中国首脳会談での議論(2022年4月4日記事参照)と同様に、中国が相応の役割を果たすことを期待すると述べた。インドに対しては、気候変動やデジタル、貿易面などでの協力を求め、EUが提供できるインフラ支援策としての「グローバル・ゲートウェイ」政策(2021年12月3日記事参照)について紹介した。

(安田啓)

(EU、インド)

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