EUとニュージーランドがFTAで合意、最も持続可能性を重視したFTAと強調

(EU、ニュージーランド)

ブリュッセル発

2022年07月04日

欧州委員会は6月30日、EU・ニュージーランド間の自由貿易協定(FTA)の交渉妥結を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

欧州委は、同FTAが発効した場合、EUとニュージーランド間の貿易が最大で3割増加すると試算。同FTAの最終の協定文案は、まだ公開されていないものの、EUからニュージーランドへの輸出に対する関税はFTAの発効と同時に全て撤廃される。また、ニュージーランドからEUへの輸出に対する関税も91%が発効と同時に撤廃され、発効から7年目には97%が撤廃される。ただし、焦点となっていた農産物・食品に関しては、限定的なWTO割当と高い関税の対象になっているニュージーランド産の乳製品や牛肉など一部の品目については、関税割当を設け、割当対象分に対する関税ゼロあるいはこれまでより低い関税率の適用にとどまる見込み。そのほか、EUとニュージーランドは、それぞれの地理的表示(GI)を法的に保護する。

また、サービスの分野でも、ニュージーランドはEU企業に対して、金融、通信、海運、配送などの分野を開放する。EUとニュージーランドは、それぞれの投資家を自国の投資家と区別なく取り扱うことでも合意しており、さらに、EUとニュージーランド間のデータの流れやデジタル貿易を促進する規定なども含まれている。

最も野心的なTSD章を含むFTAで民主主義国間の協力の成果と強調

同FTAは、欧州委が6月に提案した「貿易と持続可能な開発に関する章(以下、TSD章)」の新たな方針(2022年6月29日記事参照)を反映した初のFTAとなる点を、欧州委は強調している。ILOの「労働における基本的原則と権利」や気候変動に関するパリ協定といったTSD章の核心的コミットメントの違反に対しては、関税の一時的な引き上げといった制裁を可能にする紛争解決メカニズムを導入し、脱炭素化などに資する製品・サービスの市場も発効と同時に自由化される。このほかにも、「貿易と化石燃料に対する補助金」やEUのFTAとしては初となる「貿易とジェンダー平等」に関する独立した条項も含まれるなど、欧州委は、これまでEUが締結したFTAの中で、持続可能性に最も野心的にコミットしたFTAだとした。欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、EUにとって、ニュージーランドはインド太平洋地域における重要なパートナーで、地政学的に重要な時期にニュージーランドとFTAに合意することができたとして、民主主義国間の協力の成果だと評価した。

同FTAは今後、法的精査およびEUの全公用言語への翻訳を経て、EU理事会(閣僚理事会)の採択後に、2023年中にEUとニュージーランド間で署名される見通しだ。その後、欧州議会の同意と、ニュージーランドの批准を経て、早ければ2024年には発効する予定。

(吉沼啓介)

(EU、ニュージーランド)

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