バイデン米政権、ロシアによるウクライナの一部併合受け新たな制裁

(米国、ウクライナ、ロシア、ベラルーシ)

ニューヨーク発

2022年10月03日

米国のバイデン政権は9月30日、ロシアがウクライナの東部・南部の4州を併合(2022年10月3日記事参照)したことを受けて、新たな制裁を発動した。

財務省は、ロシアの軍民複合体関係者や政府高官の親族など14人と、ロシア国会議員278人を「特別指定国民(SDN)」に指定した。SDNに指定した対象には、在米資産の凍結や米国人(注1)との資金・物品・サービスの取引禁止という制裁を科す。また、SDNが直接または間接的に50%以上所有する事業体も当該制裁の対象となる。今回指定したSDNの詳細は財務省のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで確認できる(注2)。財務省はさらに、ロシア国内に存在するか否かにかかわらず、ロシアによるウクライナ侵攻・併合に関して政治的・経済的支援を行う事業体・個人も制裁対象とし得るとのガイダンスを発表した。対ロ制裁に関するよくある質問(FAQ)の1091番目外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公表している。これは、ウクライナ4州での「住民投票」を受けてG7首脳が9月23日に発表した共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに沿った内容となっている。同声明はロシアを厳しく非難するとともに、ロシアに政治的・経済的支援を行う者にも制裁を科すと示唆していた。一方、米国の制裁は、ウクライナとウクライナ国民を対象にしていない。これには、ロシアが併合を宣言した地域に住んでいるウクライナ人も含まれる。また、これまでのガイダンスに従って、食料や医薬品の輸出、新型コロナウイルスへの対応、国際機関の公務なども対象としないとしている。

商務省は財務省の制裁と合わせて、ロシアとウクライナ・クリミア地方に所在する事業体57社を輸出管理規則(EAR)上のエンティティー・リスト(EL)に掲載した。官報では10月4日に公示外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされるが、EL掲載の効力は9月30日から有効だ。主な掲載理由として、ロシア軍を支援するために米国製品を入手しようとしたことを挙げている。ロシアとベラルーシ向けの輸出管理については、既に4月8日付で、規制品目リスト(CCL)に掲載のデュアルユース品目を両国に輸出・再輸出・国内移送(輸出など)することを実質的に禁止している(2022年4月12日記事参照)。ELに掲載された場合は、CCLに掲載のない民生品(注3)についても、輸出などが規制されることになる。

国務省では、ロシアとベラルーシの軍関係者など911人に対して、米国への入国ビザの発給を禁止するとともに、既にSDNに指定しているロシア政府高官の親族をSDNに指定したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしている。

なお、米政府が2022年2月以降に発動した対ロシア・ベラルーシ制裁関連は添付資料参照。

(注1)米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す。

(注2)ウクライナ情勢に関する財務省による制裁の全容は、同省の「ウクライナ/ロシア関連制裁」のポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。制裁対象に指定した個人・企業などについては、同省外国資産管理局(OFAC)のデータベース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでCountry欄のRussiaを選択し、Searchをクリックすることで確認可能。

(注3)これら品目は、EARで「EAR99」と分類される。米国の輸出管理法令の概要・運用などについては、ジェトロ調査レポート「厳格化する米国の輸出管理法令」「続・厳格化する米国の輸出管理法令 留意点と対策」を参照。

(磯部真一)

(米国、ウクライナ、ロシア、ベラルーシ)

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