バイデン米大統領、国連総会演説でロシアを糾弾、安保理改革を支持

(米国、ロシア、ウクライナ、中国、イラン、北朝鮮)

ニューヨーク発

2022年09月22日

米国のジョー・バイデン大統領は9月21日、国連総会の演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでウクライナ侵攻を続けるロシアを糾弾した。

バイデン大統領は冒頭で、「安全保障理事会の常任理事国が、主権国家を地図から消し去るために隣国を侵攻した」と述べ、ロシアは国連憲章の中核的理念である、主権と領土の一体性の保全を、恥じることなく侵害したと厳しく批判した。続けて、米国がウクライナへの継続的支援を行っていることや、同盟・友好国とロシアに制裁を科していることに触れ、「われわれは結束してウクライナに寄り添う。結束してロシアの侵攻に立ち向かう」と強調した。さらに、国連はより包摂的になる必要があるとし、安保理常任理事国の拒否権発動は異例の事態を除いて控えるべきとするとともに、常任・非常任理事国両方の参加国数を増やすことを支持するとした。

演説の後半では、気候変動や公衆衛生、食糧危機など世界規模の課題に対する米国の対応や、21世紀の課題に対応するための国際的なルールメイキングに向けた取り組みに言及した。前者については、米国史上最大となる3,690億ドルの気候変動対策予算を盛り込んだインフレ削減法(2022年8月17日記事参照)を成立させたことや、新型コロナウイルス用ワクチンを116カ国に延べ6億2,000万回分を供給した成果などを強調した。また、世界の食糧安全保障のために2022年内だけで29億ドルを追加拠出すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ルールメイキングについては、地域レベルの取り組みとして米EU貿易技術評議会(TTC、2022年5月17日記事参照)やインド太平洋経済枠組み(IPEF、2022年9月12日記事参照)、G7による途上国へのインフラ投資支援計画(PGII、2022年6月28日記事参照)の創設などを紹介した。

中国との競争関係については個別に言及し、米国は「衝突も新たな冷戦も望まない。どの国に対しても米国かその他の国を選ばせることはしない」が、自由で開かれ、安全で繁栄に満ちた世界のビジョンを促進するとした。また、ナンシー・ペロシ下院議長が8月に訪台(2022年8月4日記事参照)して以降、緊迫している台湾海峡については、「平和と安定の維持を追求する」とし、米国は1つの中国政策を引き続き維持すると表明するともに、いずれかの側による一方的な現状変更には反対を続けるとした。

バイデン大統領は最後に、核不拡散体制と人権の保護に触れた。前者については、ここでもロシアのウラジーミル・プーチン大統領が核使用の可能性を示唆した点を挙げて批判した。また、中国も不透明なかたちで核軍備の増強を行っていると懸念を示すとともに、北朝鮮は引き続き国連決議に違反していると批判した。膠着(こうちゃく)しているイランとの核合意の再建については、イランが義務を履行すれば、米国は包括的共同行動計画(JCPOA)に戻る準備があるとしつつ、イランの核兵器取得は許さないとくぎを刺した。人権については、国連憲章と併せて世界人権宣言に導かれてこそ、国連は不屈の希望に満ちた行動ができると締めくくった。

(磯部真一)

(米国、ロシア、ウクライナ、中国、イラン、北朝鮮)

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